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 ダブル・ジョーカー 
 

柳広司/著 出版社:角川書店 定価(税込):1,575円  
第一刷発行:2009年8月 ISBN:978-4-04-873960-3  
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話題沸騰!「ジョーカー・ゲーム」第二弾。結城率いるD機関にライバル出現。その名も風機関。同じ組織にスペアはいらない。食うか、食われるか。「躊躇なく殺せ、潔く死ね」を徹底的に叩き込まれた風機関がD機関を追い落としにかかるが……。
 
ダブル・ジョーカー 柳広司/著

本の要約

結城中佐率いる“D機関”の暗躍の陰で、もう一つの秘密諜報機組織“風機関”が設立された。だが、同じカードは二枚も要らない。どちらかがスペアだ。D機関の追い落としを謀らんとする風機関に対し、結城中佐が放った驚愕の一手とは――。表題作「ダブル・ジョーカー」ほか、“魔術師”のコードネームで伝説となったスパイ時代の結城を描く「柩」など、5編を収録。

柳広司(やなぎ・こうじ)
1967年三重県生まれ。神戸大学法学部卒。2001年、「黄金の灰」でデビュー。2001年、『贋作「坊っちゃん」殺人事件』で第12回朝日新人文学賞受賞。「ジョーカー・ゲーム」で吉川英治文学新人賞と推理作家協会賞を受賞。他に「新世界」「トーキョー・プリズン」「吾輩はシャーロック・ホームズである」などがある。


オススメな本 内容抜粋

廊下の足音が部屋の前で止まり、襖が開いて、女中が顔を出した。
「あの……失礼します」
敷居に膝をつき、どぎまぎとした様子で座敷を見回したのは、頬の真っ赤な、見るからに山
出しの小娘だ。さっきも運んできたお膳をひっくり返すなど、安くはない金を取る伊豆の観光
旅館にしてはいささかお粗末な接客ぶりだが、雇われてまだ間がないのか、あるいは近隣の農
家の娘が家業の合間に手伝いに来ているだけなのだろう。
座敷には男ぽかり七人。それぞれの前に膳が据えられ、料理のほかに何本かお銚子がついて
いる。
一斉に振り返った男たちの視線に、若い女中はたちまち赤い頬をいっそう真っ赤にして、ど
もりながら口を開いた。
「あ、あの、お食事中すみません。……あの、か、風戸課長さんは?己
上座に座る男が、唇にあてていた盃を膳に戻して、ゆっくりと向き直った。よく日焼けした
浅黒い顔。四十年配。他の者たちに比べれば、彼一人がいくらか年齢が上のようだ。
「風戸は、私だが??
「あの、課長さんにご面会の方がお見えになっておいでです。若い男の人で……お名前は……
あの、おっしゃらないのですが、なんでもお約束があると……」
「うん。来たか。通してくれ」
短く答えて、銚子に手を伸ぽした。
女中の足音が廊下を遠ざかるのを耳で追いながら、風戸は無言のまま一座の者だけにわかる
よう目配せを送った。
髪を伸ぽし、白いワイシャツにネクタイ。座敷ではさすがに背広の上着は脱いでいたが、ベ
ストは着たまま、あぐらをかき、話に興じながら酒を呑んでいる六人の若い男たちー。
“大東亜物産社員。課長風戸哲正。他課員六名”
宿帳には、都内の住所と電話番号とともに、そう記されている。
実際、いま座敷に顔を出した女中の目には“東京の会社の人が、研修のために伊豆に来てい
る”としか見えないだろう。だがー。
待っ程もなく、先ほどの女中が戻ってきた。
相変わらず頬を真っ赤に染めた女中の背後から、小柄な男が上目づかいに首をすくめ、おど
おどした様子で座敷に入ってきた。目の細い、華奢な感じの若い男だ。肌の色が生白く、その
せいか薄い唇だけがまるで朱を引いたように紅く見える。
風戸は男に近くに寄るよう手招きした。
─それで?
男の耳元で尋ねた。


(本文P. 6〜7より引用)


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