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 かんぼつちゃんのきおく
 
中島さなえ/著 出版社:双葉社 定価(税込):1,470円  
第一刷発行:2009年5月 ISBN:978-4-575-30133-5  
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ダンプカーにも負けない高速でんぐり返し。流行りのアイドルよりSHI・BU・SE・N好み。中島らものDNAがとびきりの好奇心と潤いのある優しさで、光合成した中島さなえの処女エッセイ集。
 

本の要約

故・中島らも氏の長女にして天性の文筆家・中島さなえの処女エッセイ集。その輝くユーモアはあたかも「らも」のようでありながら、とびきりの好奇心と潤いのある優しさと、そしてなにより強く伸びやな覚悟が光合成した中島さなえ。今、全力で夢をみる!

[目次]
第1章 かんぼつちゃんの記憶(自由に走れ;かんぼつちゃんの記憶;物心がつく瞬間 ほか);第2章 水びたしの世界へ(水びたしの世界へ;矢のように速く;今がその時さ ほか);第3章 無惨なトートと無念な私(食物連鎖の家;魅惑のしびれ水;ムーンライト横山について ほか)

中島 さなえ (ナカジマ サナエ)       
1978年6月13日兵庫県生まれ。雑誌「ビッグイシュー」、「ゲイナー」でエッセイやコラムを執筆。文庫解説などを経て、現在、講談社文庫「インポケット」でエッセイを連載中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


オススメな本 内容抜粋

はじめに

今振り返ってみても、10代の時はひどく出たがり屋だったと思う。いや、文章を書い
たりバンドをしている今も、きっと充分に出たがり屋なんだろうけれど。その時はただ、
学校生活を存分に楽しみたかった。カトリック系の真面目な女子校で、汚れなきシスター
や熱心な教師に教えを受け、みんな積極的にボランティア活動などをしていた。学校生
活の中でなかなかお笑いに興じる生徒は少なかったけれど、私は何かみんなで笑えるも
のを作りたかった。
今、私の部屋の押し入れにある「思い出ボックス」なるものには、いくつものくだら
ないコントの台本やギャグ漫画が残っている。今読み返してみて本当に懐かしく、残し
ておいて良かったと心から思う。
小学校五年生で初めてのコントを書いた。二泊三日の山奥での転地学習で、キャンプ
ファイヤーを行う際の出し物だった。探検隊がジャングルの奥地にやってくる設定で、
そこで出くわしたインディアン集団とまったくコミュニケーションがとれず、というド
タバタ喜劇だった。その時にいまいち笑いが取れなかったことが悔しくて、それから小・
中・高と、修学旅行のスタンツや運動会の打ち上げ、出し物をする機会がある度に、コ
ントや漫才を書いては舞台に立った。メンバーを集めて必死に何度も稽古を重ね、本番
で発表をする。笑いがドッと巻き起こる瞬間、最高だった。悦惚となった。
高校生活の最後あたりに一度だけ、劇団リリパットアーミーへの入団のお誘いがあっ
た。その時は「これからは音楽をやっていきたい」という理由でお断りしてしまった。
何度も学校でコントをやって(それはもう稚拙なものだったけれど)、舞台で何かを演じ
ることや文章を書くことに、甘く強い中毒性があることに気づいてしまっていたためだ。
舞台を始めてしまえば、きっと一生抜けられないだろう。音楽への興味がなければ、喜
んでそこに身を投じていたのだけれど。
高校を卒業してからは念願のバンド活動に夢中になり、コントなどの台本のみならず、
文章を書くという行為自体から長い間遠ざかっていた。五年前に父が死んで追悼文を寄
稿したのが、文章と再び向き合えた瞬間だった。「やっと再会した」と思った。父が消え去っ
たのに「再会した」とは何だか皮肉なものだ。こっ恥ずかしいのだけれど、ここは素直に「再
会させてくれた」としておこうか。こうしてまた文章を、しかもこういった大舞台で書
かせてもらうことができた。エッセイを書く度に、あの舞台にあがった時のような悦惚
感を感じている。私が今、文章を書いている動機はあの時のまま、「何かみんなで笑える
ものを作りたい」という中毒性のある欲求だ。
読んでいただく前にひとつ。私のエッセイは“ちょっとした豆知識”や“世間一般のデー
タ”が披露される気配もいっさいなく、生活する上で何の役にも立たないことをお伝え
しておきたい。
ただ、昭和と平成のはざまに、こんなアホな子どもがご陽気にとびまわっていたこと
を知っていただき、フフッと笑ってもらえれば嬉しい。

中島さなえ


(本文P. 2〜4より引用)


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