◎はじめに
男の子の遊びが理解できないお母さんたちへ
この本を手に取った多くの方は、おそらく小学生かそれ以下の男の子をもつ、お
母さんでしょう。そんなお母さんたちに質問があります。
「あなたは13歳、つまり中学1年生の頃、どんな遊びをしていましたか?」
この質問にすぐ答えられる方は少ないと思いますので、質問を変えましょう。
「あなたは13歳の頃、どんなことが楽しかったですか??
この質問なら、多くの方が答えられるでしょう。そして、その答えは「友達との
おしゃべり」「ショッピング」「アイドル」「恋」などではないでしょうか。
「13歳の頃の楽しみ」と記しましたが、じつはこれらは、大人になっても楽しめる
ものばかり。ランチタイムに同僚とおしゃべりをする、会社帰りにショッピングを
する、好きなアイドルのコンサートに行く、男性とデートを楽しむ……。
いかがでしょう。こうした毎日を楽しんでいる若い女性は、いつの時代にもいる
のではないでしょうか。
これは、13歳の女の子の楽しみは大人になっても続くという証左です。
このことをもう少し考察すると、「女の子は小学校を卒業する頃には、大人の女
性とほとんど変わりない世界に入ってしまうもの?と言い換えることができます。
ところが、男の子は違います。男の子は中学生になったからといって「大人の世
界?に行くことはまずありません。それどころか、小学生の頃とほとんど変わりな
いことをして「遊んで」いるのです。
たとえば、男性と女性に「あなたは何歳まで“鬼ごっこ”をしていましたか??
という質問をしたとしましょう。
すると、女性は「小学4、5年生くらいまでね。6年生になったら鬼ごっこは卒
業したわ?と答える人が多く、男性は「いやあ、中学3年生くらいまでやってたなあ」
と答える人が多いと予測されます。それどころか、「大学のゼミ合宿で、自由時間
に缶けりしたことが忘れられない」という人さえ出てくるはずです。
”遊び”は必ず卒業するもの。このことに男女の違いはありません。
しかし、卒業する年齢となると、男女で大きな違いがあります。
すなわち、「女の子は遊びから卒業するのが早く、男の子は遊びから卒業するの
が遅い」のです。
男の子とは、女の子と違っていくつになっても小さな子どものような遊びに興じ
る生き物なのです。
ところが、お母さんたちはこのことを理解しません。
とくに「六年制私立の女子校」の出身で、兄弟がいないお母さんは、「中学生男子」
がどういうものか知りません。
そのため、「息子が中学生にもなって鬼ごっこという幼稚な遊びに夢中になって
いる」ことや、「小学校高学年になったというのに、ヒマさえあれば公園で友達と
バカ騒ぎをして毎日真っ黒になって帰ってきたり、わけのわからないものを集めて
喜んだりしている?ことが理解できないのです。
理解ができないのなら「男の子とはそうしたもの」と納得していただければいい
のですが、得てして「私が6年生のときは、もう鬼ごっこなんかバカらしくてやっ
てられなかった」「中学生になっても小学生時代の遊びを続けているなんて、考え
られない?などとわが子の未来を憂いてしまいます。
そして、そのはてに「大きくなっても遊んでばかりいるのはバカな子?と決めつ
けて、その「バカな習慣」をやめさせようという努力を始めてしまうのです。
これは、とても愚かなことです。
私は常々、「男の子には女の子にない、好奇心旺盛にちょろちょろと出かけていき、
何かを得る力がある」と主張し、この男の子特有の、そして男の子になくてはなら
ない力を“オチンチンカ”と名付けました。
ひとつの場所にとどまって、その場の変化を敏感に察知して対応する感受性にす
ぐれた女の子に対し、男の子は結果をあれこれ考える前に出かけていき、試してみ
て、そして創意工夫をこらさずにいられない好奇心にすぐれています。
それこそが“オチンチンカ”です。
“オチンチンカ”は男の子が自らの能力を伸ばして成長していくために不可欠なも
の。そして、“オチンチンカ”を育むためには、遊びが必要なのです。 |