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 テンペスト 上 若夏の巻
 
池上永一/著 出版社:角川書店 定価(税込):1,680円  
第一刷発行:2008年8月 ISBN:978-4-04-873868-2  
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珊瑚礁王国の美少女・真鶴は性を偽り、宦官になる―。前人未踏のノンストップ人生劇場。
 

本の要約


小説界をなぎ倒す嵐(テンペスト)襲来!ノンストップ王朝ロマン。美と教養と見栄と意地が溢れる珊瑚礁の五百年王国は悩んでいた。少女まづるは憧れの王府を救おうと宦官と偽り行政官になって大活躍。しかし待ち受けていたのは島流しの刑だった――。見せ場満載、桁外れの面白さ!

池上 永一 (イケガミ エイイチ)        1970年、沖縄県那覇市生まれ、のち石垣島へ。94年、早稲田大学在学中に「バガージマヌパナス」で、第6回日本ファンタジーノベル大賞を受賞する。98年『「風車祭(カジマヤー)」』が注目される




オススメな本 内容抜粋

珊瑚礁の王国に龍の眠る巣がある。
龍が地上で寝ているときは繁栄をもたらすが、目
覚めて天を駆けれぽ地上は荒れ狂うという。龍とい
う生き物は寝ているとき以外は常に交尾ぼかりして
いるそうだ。龍が地上で交われぽ木々をなぎ倒し、
海は高波で荒れ、空は咆哮で轟き、大地は昼夜揺れ
続けるという。荒れ果てた国土にはついに草木ひと
つ生えない荒野が広がるのだそうだ。
民は龍を敬い、崇め、そして恐れるあまり、龍を
統べる者を王とした。以来、龍の巣は王の住居とな
り、首里城と呼ばれた。王と王族とその臣下たちは
龍を起こさないように細心の注意を払い、用心深く
眠りを監視していた。だが、ある日ふとした弾みで
臣下が玉座に施された龍の目を指で突いてしまった
ために、堅牢な龍の眠りが破られてしまった。これ
が王国の滅亡の真の発端であると誰が信じるであろ
う?ほどなく龍が目覚め、嵐を呼び寄せた。
王宮に黒い嵐が迫る。墨汁を零したように空が濁
り、音をたてて天が転がり落ちてくる。稲光りが激
しく点滅するたびに、赤い宮殿が闇夜に浮かび上が
り、王宮は瞬く間に天の底に飲み込まれてしまった。
荒ぶる風と雨と雷を従えて王宮の御庭に降り立っ
た嵐は、王への挨拶もないままに、いきなり正殿の
扉を蹴破った。嵐が首里城正殿に施された三十四匹
の龍に目覚めを促す。
─ 龍たちよ、雷となって王宮を出でよ。繁殖の
ときがやってきた。
刹那、目覚めた龍が雷となって空を駆け抜ける。
千年ぶりの目覚めと交尾の季節が訪れた。発情した
龍たちが各々番となって激しく尻尾を揺さぶると、
火の粉が雨に混じって降ってくる。土砂降りの雨と
猛烈な風を撒き散らして吼え狂う龍のせいで、空も
海も大地も全て泥淳にかき混ぜられていった。龍た
ちが交尾の宴をするには、王都はあまりにも小さす
ぎた。
龍が、王の根城に巣くっていた龍たちが、
堅い眠りで縛り上げられていた龍たちが、
千年に一度の発情期を迎えた。
目を潰されて目覚めてしまった龍たちが、
嵐になって交尾する。
大地を揺さぶり、尾で空を叩き落として、
月を半分に食い千切った龍たちが、
王の都で交尾する。
億千万の鱗を撒き散らした龍たちが、
田畑を燃やして、橋を押し流して、
轟きながら交尾する。
目を潰されて王宮から逃げ出した龍たちが、
竜巻になって、絡まって、転がって、
千切れながら交尾する。
首里の赤田村の一画に番となった龍が落ちてきた
のは、交尾の嵐が収まらぬ未明のことである。外の
暴風雨など気にしている余裕もないほど、家の中は
緊張に包まれていた。中では難産に息む女の声が嵐
をかき消していた。士族の家らしい風格のある造り
ではあるが、手入れが行き届いていない庭は、一族
が栄華を極めていたのは遠い昔であることを偲ぽせ
た。
「こんな嵐の日に生まれるなんて、どんな運命の子
なんだい」
陣痛は夕刻に始まったから、本来なら嵐の前に生
まれていたはずである。しかし陣痛が続いてもなか
なか頭が出てこない。産婆は一晩中、逆子の赤ん坊
と格闘していたのだ。産婆は母親の体力を鑑みても
はや一刻の猶予もないと決意した。
「産湯が冷めてしまっているよ。そこの女中さん、
もう一度温め直しておくれ」
台所では主人が雇った霊媒師のユタが安産祈願を
している。閃光が走るたびに、ユタは龍たちの高ぶ
る姿を嵐の中に見つけた。
「龍が、王宮を逃げ出した龍たちが、交尾してい
る!」
「何、世迷い言を言ってるんだい。ユタムニー(ユ
タみたいだよ)」

(本文P. 5〜7より引用)


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