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 戸村飯店青春100連発
 
瀬尾まいこ/作  出版社:理論社 定価(税込):1,575円  
第一刷発行:2008年3月 ISBN:978-4-652-07924-9  
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切っても切れないくされ縁?さわやか爆笑コメディー。
 

本の要約

大阪の下町にある中華料理店・戸村飯店の二人の息子は、性格も見た目もまるで正反対。東京、大阪と離れてくらす兄弟が再会をきっかけに人生を見つめ直していく。一番大切なことは近すぎて見えないもの。単純でバカでかっこわるいけどかっこいい男子の姿を見事に描いた、瀬尾まいこ・渾身の一作。
 
瀬尾 まいこ (セオ マイコ)
1974年大阪府生まれ。大谷女子大学国文科卒業。2001年「卵の緒」で坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、翌年、単行本『卵の緒』(マガジンハウス)でデビュー。2005年『幸福な食卓』(講談社)で吉川英治文学新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


オススメな本 内容抜粋

1
ラブレターを代筆するという話はよくある。高校一年生のときの英語の教科書にも、ラブレ
ターを代筆していた郵便配達のおっさんが、送り先の女の人のハートを射止めたという話が載
っていた。結構、ポピュラーなことなのかもしれない。でも、身内に書くってのはどうだろう。
しかも、あの兄貴に。
「代筆って言うほどのことやないよ。こういう風に書いたらええよって、アドバイスしてくれ
るだけでええんやって」
駅から伸びる緩やかで長い坂道。もうすぐ春を迎える空から、暖かい日差しが遠慮がちに降
っている。学年末テストも終わり、あとは卒業式と終業式を残すだけだ。部活動を終え、昼前
には学校を出られる。ゆるい風と同じく、俺ら高校生も間延びしそうな穏やかな日々を過ごし
ている。
「そんなん面倒くさいわ」
「なんでよ。適当に先輩の心をそそるような言葉を教えてくれたらええだけやのに」
岡野はしつこく食い下がる。どうして女はわずらわしいことを、ごく簡単なことのように人
に押し付けるのだろう。
「そう思うんやったら、岡野が自分で勝手に書けばええことやろ」
俺はうんざりしながら言った。
平日昼過ぎのせいか、道には俺と岡野しかいない。今のクラスで懲力涼駅を使って通学して
いるのは俺たちだけ。だから、なんとなく一緒に登下校することが多い。
「ほんまコウスケって、けちくさいな」
岡野にふてくされて、俺はやれやれと坂道の先を眺めた。坂を登りきると、ちょっと大きな
道に出る。その道沿いに俺の家、戸村飯店がある。
戸村飯店は親父の親父、つまり、俺のじいちゃんの代から始まった中華料理店だ。ラーメン
やチャーハンが主なメニューの超庶民的なさえない店だけど、安くておいしいからそこそこは
やっている。平日は常連客が集まり、土日は家族連れでにぎやかになる。
「手紙くらい、それこそお前が適当に書いたらええやん。それで十分ええのが書けるって」
俺は岡野の機嫌を取り戻そうと軽い感じで言ってみた。

(本文P. 8〜9より引用)


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