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 漫画ノート
 
いしかわじゅん/著 出版社:バジリコ 定価(税込):2,100円  
第一刷発行:2008年1月 ISBN:978-4-86238-070-8  
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名作『漫画の時間』につづく、BSマンガ夜話でおなじみの漫画読み、いしかわじゅん さん待望の評論集第2弾
 

本の要約

名作『漫画の時間』につづく、いしかわじゅんさんの漫画評論第2弾が、12年の時を経て、ついに刊行。アクション、プロレス、怪奇、スポ根、ガロ系、脱力系、時代もの、エロ、少女、パチンコ、SF、古典から大ヒット作まで…21世紀のニッポンを覆い尽くす豊かな「漫画」の世界。

[目次]
第1章 漫画は冒険する(背中合わせの“生”―『きらきらひかる』郷田マモラ;脱力系―『ねこロジカル』高田三加 ほか);第2章 BSマンガ夜話(『BSマンガ夜話』;猛スピードで走る―『うしおととら』藤田和日郎 ほか);第3章 愛の漫画(源文の不思議なユーモア―『オメガJ』小林源文;ぼんやりとした視点―『BWH』花見沢Q太郎 ほか);第4章 彼らの肖像(楳図さんのサービスについて―楳図かずお;ビッグE―江口寿史 ほか);第5章 秘密の花園(実物大の物語―『大きなヤシの木の下で』大城ゆか・『プリン・ア・ラ・モード』ぬまじりよしみ;少女漫画のスパイもの―『Z‐ツェット‐』青池保子 ほか);第6章 美しい物語(才能が宿る―『あたしンち』けらえいこ;カッコいい木葉―『キリコ』木葉功一 ほか)




・石川先生の手書きのPOP(ありがとうございました)


オススメな本 内容抜粋

背中合わせの〈生〉『きらきらひかる』郷田マモラ

講談社から、『ミスターマガジン』という漫画誌
が出ていた。
講談社の青年漫画誌の中では最後発誌だし、メン
バー的にも企画的にもやや地味な雑誌だったので、
たぶん毎号百万部売れているわけではないだろうな
あと思っていたら、残念なことに潰れてしまった。
ここに、ぼくの好きな漫画があったのだ。
『きらきらひかる』という。作者は、郷田マモラ
だ。
タイトルはどこかで聞いたことがある。江國香織
に同名小説がある。別にどちらかがどちらかの原作
というわけではない。江國のほうが数年先に発表し
ているのに、郷田はなぜわざわざ同名にしたのか、
かなり不思議ではある。
不思議なのは、作老のペンネームも不思議だ。マ
モラという名前の友人は、ぼくにはいない。
いろいろ不思議なところはあるが、しかし内容は
非常にオーソドックスだ。今どき珍しく、テーマを
きちんと立てて、奇を衒わないストーリーを描いて
いる。題材が変わっているのでストーリーも変格の
ような印象もあるが、実は丁寧に王道の物語作りを
している。
絵柄は、かなり変わっている。おそらく筆か筆ペ
ンで描いているのではないかと思う。決して達者と
はいえない線だ。今の流行りでもない。しかし、誰
にも似ていないオリジナリティがあるし、描くもの
にも合っている。ややギャグ風のデフォルメの強い
絵なのだが、扱っている非常に重いテーマが、この
絵柄でかなり救われているのだ。
主人公の女性は、医者になったぼかりの、警察の
監察医だ。つまり、死体を扱う医者だ。この死体は
どこからきて、なぜ死に至ったかを解剖して調べる
医者だ。だから当然、毎回人の死ぬシーンがある
し、死体が出てくる。そして解剖シーンがある。内
臓が出て頭蓋骨が現れ、肉や骨が切断される。
なぜ郷田マモラは、そんな陰惨なシーンばかり
を、毎回執ように描くのか。
それは、作中で、主人公の女医に語らせている。
彼女は、「死んだ人の言葉を聞いてあげたい」とい
うのだ。語らない死体の代わりに、自分が語ってあ
げたい、と思っているのだ。
死は誰にも唐突だ。誰もが、充分な準備なしに、
死の世界に赴かなくてはいけない。生の世界に残し
てきた死者の思い、誰かに伝えたかった気持ち、そ
れを代弁したいと思っているのだ。
だから、死と死体を扱う話でありながら、この漫
画は、凄くポジティブだ。
テーマは〈死〉ではなく、実は背中合わせの
〈生〉なのだ。
ほかの作品でも郷田は死をテーマに据えることが
多いが、この漫画を読んでいると、いつも、〈生き
ていることはそれだけで美しく価値あることだ〉と
いう作者の思いが伝わってくるのだ。
特異な絵柄ときちんとしたストーリ!。
重いテーマではあるが、ぼくは毎回楽しみに読ん
だのだ。


(本文P. 14〜15より引用)


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