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彩乃ちゃんのお告げ 
著者
橋本紡/著
出版社
講談社
定価
税込価格 1,470円
第一刷発行

2007/10

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ISBN 978-4-06-214328-8

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少し風変わりな少女・彩乃ちゃんを、いっとき預かることになった人々。彼女には不思議な能力があるというが……。少し素敵な未来が見える、心あたたまる物語。
 

本の要約

明日はきっと、いいことあるよ。小学生にして「教主さま」。ふしぎな力をもつ少女、彩乃ちゃんがひきおこす3つの奇蹟の物語。注目の著者が描く優しいファンタジック・ストーリー。「誰かの人生にかかわって、ちょっとだけ方向を変える。それでみんな、少し幸せになる」素朴で真面目で礼儀正しくて。一見ふつうの5年生だけど彩乃ちゃんには、見えている。周りの人のちょっとした未来。うまくいかない相手と仲良くする方法。幸運をよぶ少女と迷える人たちのひと夏のできごと。ほんの小さなきっかけで世界はたしかに、変わってく。



オススメな本 内容抜粋

なぜだか教主さまを預かることになった。
教主さまの名前は彩乃ちゃんといって、小学校五年生の女の子だ。この年ごろの子がた
いていそうであるように、きれいな真っ直ぐの髪をしている。まとめた髪は艶々と光っ
て、とても美しい。子供のころは、わたしもこんな髪だった。昔の写真を見れば、髪は真
っ直ぐ肩まで垂れて、同じように艶々と光っている。なのに、いつからか癖がついた。湿
気の多い日なんて、けっこう大変だ。巻いたり跳ねたりする髪を抑えるため、ずいぶんと
努力もしたけれど、最近はもう諦め気味。なにをしたって無駄なので、髪ゴムで無理矢理
ひっつめている。
真っ直ぐの髪の彩乃ちゃん。
化粧品が大好きな彩乃ちゃん。
わたしの胸辺りまでしか背丈がない彩乃ちゃん。
彼女は偉い偉い教主さまらしい。
戸惑いながら、わたしは言った。
「ねえ、どういうことなのよ」
目の前には、淳司が座っている。いきなり彼が来たものだから、部屋はちゃんと片づけ
られておらず、いろんなものがだらしなく散らばったままだった。せめて電話を入れてく
れれぽいいのにと思いつつ、テーブルに置かれたままの缶ビールについ手を伸ばしてしま
う。口をつけようとしたところで、お酒なんて飲んでる場合じゃないことに気づき、いく
らか迷ってから、缶をテーブルに戻した。
「大変なんだ」
頭を丸刈りにした淳司は、ひたすら真剣だった。
「とにかく一大事なんだ」
いきなり訪ねてきた淳司は、ずっと正座で、思い詰めた顔をし、やけに緊張した声を出
している。わたしはといえば、アルバイトを終えてようやく帰宅し、ビールを引っかけて
ほろ酔い気分。
酒に酔ってヘラヘラしているのに、真面目な顔で深刻な話をされても、ついていけるわ
けがない……。
彼が語るところによると、入信しているナントカ教の教祖さまが危篤状態に陥り、大騒
動になっているのだそうだ。次は誰が組織を引っ張るのか、宗教的な長を誰にするのか。
揉めに揉めているとのこと。
事情を聞くだけで、実に厄介だとわかる。
とはいえ、わたしにとってはどうでもいい話だった。そんな新興宗教があることなんて
知らなかったし、もちろん入信もしてない。そもそも、わたしは宗教というものに興味が
ないのだ。
時計を見ると、もう夜の十時だった。
せっかくの、ひとりでくつろぐ時間が台無しだ。
「わかったわ。事情はわかった」
本当は、あまりわかってないけれど。面倒なことを、これ以上聞きたくなかった。
「どうして、わたしのところに来たわけ」
「僕は重大な役目を与えられた」
「重大な役目……」
「これをなんとかしなければ、僕はもう、どうしようもない」
彼の真剣さに、わたしはドン引き状態だった。ナントカ教〜〜何度言われてもまったく
覚えられないーというのがなんなのか、さっぱりわからなかったし、高校時代のチャラ
チャラした印象しか持ってない淳司が、そんなところに入信して頭を丸めているのも理解
しがたかった。


(本文P. 7〜9より引用)

 

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