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 ホームレス中学生
著者
田村裕
出版社
ワニブックス
定価
税込価格 1,365円
第一刷発行
2007/10
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ISBN 978-4-8470-1737-7

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ダンボールを食べ、ウンコの神様と呼ばれた…麒麟・田村のせつな面白い公園生活!!麒麟・田村の貧乏自叙伝。
 
ホームレス中学生 田村裕

本の要約

麒麟・田村のせつな面白い貧乏生活がついに小説に!中学生時代の田村少年が、ある日突然住む家を無くし、近所の公園に一人住むようになる超リアルストーリー。ダンボールで飢えを凌ぎ、ハトのエサであるパンくずを拾い集めた幼き日々から、いつも遠くで見守ってくれていた母へ想いが詰まった、笑えて泣ける貧乏自叙伝。



オススメな本 内容抜粋

衝撃の解散劇

家が無くなった。
それは、僕の想像を超えた出来事だった。13歳の僕には理解しきれなかった。
中学二年の一学期の終業式の日。
朝、いつものように起きるとお父さんはもうどこかに出掛けていて、5歳上の大学一年のお兄ち
ゃんは入学してようやく慣れてきたであろう大学に行く準備を、4歳上のお姉ちゃんは大学受験を
控えた高校に行く準備をしていた。
いつも通りの朝。
僕は僕で中学校に行く準備をして出掛けた。7月末のその日は朝から暑く、歩いて学校に行くだ
けでも結構な汗をかいた。学校に到着して同級生と顔を合わせ、夏休みの予定などを呑気に話した。
バスケットボール部に所属していたの、で、部活の練習予定の合間をぬってキャンプに行こうと友
達とプランを立てたりもした。そんなに遠くに行くわけではなかったのだが、中学生の僕にとって
それは大冒険を意味し、胸を躍らせ、心をときめかせた。
やがて終業式のため全校生徒が体育館に集まり、有難みを無くした校長の話が終わり、無事に式
を済ませ、帰路に着く。家の近い友達と帰りながら夏休みの予定を披露し合い、お互いのお土産を
買う約束して別れた。
家に着くと、朝出掛けたときとは明らかに様子が違っていた。
そのときは普通のマンションの二階に住んでいたのだが、二階に上がる階段の前で僕を迎えてく
れたのは家の中にいるはずの見覚えのある家具達だった。
そのルックスから、完全に自分の家にあった家具だということはすぐにわかったのだが、タンス
の扉を無意味に開けたり閉めたりして感触を確かめ、見た目がそっくりなだけで奇跡的に我が家の
家具でないことを願った。が、長年使い親しんだ家具の感触は無情にもすぐに手に馴染んだし、引
き出しの中には僕の体操服なんかがしっかりと入っていた。
そんな言葉があるのかわからないけど、たじろぎまくりだった。たじろぎにたじろいだ。そんな
状態だった。
二階に上がる勇気が出ずに、野晒しにされた家具達をただぼーっと眺めていると、お姉ちゃんが
学校から帰ってきた。
状況というか状態を説明し、二人で二階に上がった。二階に上がると、ドアは開きっ放しになっ
ていたが、「差し押さえ」と書かれた異常に存在感のある黄色いテープがクロス状に張られれてい
て、もう家には入れなくなっていた。
どうやら田村家のお引越しは完了しているらしい。住み慣れた家の最後の顔すら見られなかった。
ふと横を見ると、お姉ちゃんは泣いていた。
僕は泣くほどにも状況を理解できていなかった。
しばらくするとお兄ちゃんが帰ってきた。
お兄ちゃんは状況を見て「お父さんの帰りを待とう」と言った。しっかり者のお兄ちゃんが帰っ
てきたことで、お姉ちゃんの涙も止まり、僕も妙な安心感に包まれていた。実際はお兄ちゃんも現
状を把握しきれず不安だったに違いないが、焦る様子も見せずに落ち着き払っていた。
もしこのとき、お兄ちゃんが取り乱していたら、お姉ちゃんも僕も収拾がつかないくらいに泣き
じゃくっただろう。長男というのも大変である。
三人でお兄ちゃんの指示通りにお父さんの帰りを待った。
待ち人きたる。
お父さんが帰宅(?)というか、とりあえず帰ってきた。笑っているわけでもなく、怒っている
わけでもなく、かといって真顔でもない複雑な表情を浮かべていた。
お父さんは僕達三人を二階へと連れて行き、クロス状に張られたテープの前に並べて、まるでバ
スガイドの名所案内のように手のひらをテープに向けて、こう言った。
「ご覧の通り、まことに残念ではございますが、家のほうには入れなくなりました。厳しいとは思
いますが、これからは各々頑張って生きてください。解散!!H」
か・い・さ・ん?あの遠足のときに使われる解散?ということは、家に帰ればいいのか?
たった今その家に入れないと言われたとこなのに?全く理解ができなかった。
お父さんはそれを告げると足早にどこかに去っていってしまったので、残された兄弟三人でこれ
からどうするかを話し合った。お兄ちゃんとお姉ちゃんは、とりあえず三人で行動してなんとかす
る方法を考えていこうと言った。
僕は依然として状況をほとんど飲み込めていないままだったが、このまま一緒にいるとお兄ちゃ
ん、お姉ちゃんに迷惑が掛かることだけはわかった。
「俺は、一人で大丈夫。なんとかするわ」
怖くて不安で、「一人にしないで」と言いたくて仕方無かったが、必死で耐えた。中学生でも働
こうと思えば働けたとは思うけど、当時の僕にはその発想が全く無かった。一人になることだけが、
なんの生産性の無いただの浪費者の僕にできる、唯一の兄姉孝行だと考えた。
お兄ちゃんとお姉ちゃんは何回も、「そんなことできない」、「一人でどうするんだ」、「一緒にき
たほうがいい」と言ってくれた。年の離れた弟を放っておけないという兄姉の愛情が凄く伝わって
きた。二人とも責任感が強かったので、説得するにはかなりの時間がかかった。


(本文P. 4〜6より引用)

 

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