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 ぼくには数字が風景に見える
著者
ダニエル・タメット/著 古屋美登里/訳
出版社
講談社
定価
税込価格 1,785円
第一刷発行
2007/06
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ISBN 978-4-06-213954-0

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2万桁以上の円周率暗唱記録を持ち、6ヵ国語を話す高機能自閉症の英国の青年が、半生をたどりながら、自分の内面世界を表現豊かに描き出す感動の記録。
 
ぼくには数字が風景に見える ダニエル・タメット/著 古屋美登里/訳

本の要約

著者ダニエルは、数学と語学の天才青年です。それは、ダニエルが映画『レインマン』の主人公と同じサヴァン症候群で、数字は彼にとって言葉と同じものだから。複雑な長い数式も、さまざまな色や形や手ざわりの数字が広がる美しい風景に感じられ、一瞬にして答えが見えるのです。ダニエルは、人とのコミュニケーションにハンディをもつアスペルガー症候群でもあります。けれども、家族や仲間の愛情に包まれ、一歩ずつ自立していきます。本書は、そんなダニエルがみずからの「頭と心の中」を描いた、驚きに満ち、そして心打たれる手記です。

[目次]
青い9と赤い言葉;幼年時代;稲妻に打たれて;学校生活がはじまった;仲間はずれ;思春期をむかえて;リトアニア行きの航空券;恋に落ちて;語学の才能;πのとても大きな一片;『レインマン』のキム・ピークに会う;アイスランド語を一週間で


オススメな本 内容抜粋



青い9と赤い言葉

青い日に生まれて

ぼくが生まれたのは一九七九年の一月三十一日、水曜日。水曜日だとわかるのは、ぼくの頭のな
かではその日が青い色をしているからだ。水曜日は、数字の9や諍いの声と同じようにいつも青い
色をしている。ぼくは自分の誕生日が気に入っている。誕生日に含まれている数字を思い浮かべる
と、浜辺の小石そっくりの滑らかで丸い形があらわれる。滑らかで丸いのは、その数字が素数だか
ら。31,19,197,97,79,1979はすべて、1とその数字でしか割ることができない。9979までの素数
はひとつ残らず。丸い小石のような感触があるので、素数だとすぐにわかる。ぼくの頭のなかでは
そうなっている。ぼくはサヴァン症候群だ。サヴァン症候群というのは、ダスティン・ホフマン主演の映画、一九
八八年にアカデミー賞を受賞した『レインマン』がつくられるまで、世に知られていなかった。ホ
フマンが演じたレイモンド・バビットと同じように、ぼくも手順や日課に極端なこだわりを持って
いて、それは日常生活のあらゆるところに及んでいる。たとえば、毎朝必ずコンピユータ内蔵の秤
で一回分の粥の量を正確に量り、四十五グラムきっかりのポリッジを食べる。身につけている服
の枚数を数えてからでないと家から出られない。毎日同じ時刻にお茶を飲まなければ気がすまな
い。緊張が高まって呼吸できなくなると、必ず目を閉じて数を数える。数字のことを思い浮かべる
と落ち着いた気分になれるからだ。
数字はぼくの友だちで、いつでもそばにある。ひとつひとつの数字はかけがえのないもので、そ
れぞれに独自の「個性」がある。11は人なつこく、5は騒々しい、4は内気で物静かだ(ぼくのい
ちばん好きな数字が4なのは、自分に似ているからかもしれない)。堂々とした数字(23,667,
1179)もあれば、こぢんまりした数字(6,13,581)もある。333のようにきれいな数字もあるし、
289のように見映えのよくない数字もある。ぼくにとって、どの数字も特別なものだ。
どこに行こうとなにをしていようと、頭から数字が離れない。ニューヨークでデイヴィッド・レ
ターマンの番組に出演したとき、ぼくはデイヴィッドに、あなたは数字の117(背が高くて痩せて
いる)にそっくりですね、と言った。収録後に外に出て、タイムズ・スクエア(スクエアは数字に
ちなんだ名前だ)の高層ビル群を見上げたとき、9(無限に広がる感覚とつながっている数字)に
囲まれている感じがした。
数字を見ると色や形や感情が浮かんでくるぼくの体験を、研究者
たちは「共感覚」と呼んでいる。共感覚とは複数の感覚が連動する
珍しい現象で、たいていは文字や数字に色が伴って見える。ところ
がぼくの場合はちょっと珍しい複雑なタイプで、数字に形や色、質
感、動きなどが伴っている。たとえば、1という数字は明るく輝く
白で、懐中電灯で目を照らされたような感じ。5は雷鳴、あるいは
岩に当たって砕ける波の音。37はポリッジのようにぼつぼつしてい
るし、89は舞い落ちる雪に見える。
共感覚のいちばん有名なケースは、一九二〇年代から三十年間に
わたってロシアの心理学者A・R・ルリアが、恐るべき記憶力の持
ち主のシェレシェフスキーというジャーナリストについて書いたも
のだろう。その著書『偉大な記憶力の物語』で、ルリアは(シェレ
シェフスキーを「S」と呼んでいるのでここでも「S」とする
が)、「S」にはとんでもない記憶力があり、そのため言葉や数字が
さまざまな形や色として「見えた」と言っている。「S」は、五十
桁の数字の羅列を三分間じっと見つめただけで完壁に記憶できたば
かりか、何年経ってもそれを忘れることがなかった。シェレシェフ
スキーの共感覚は驚異的な長期記憶及び短期記憶を基盤としてい
る、とルリアは述べている。


(本文P. 11〜13より引用)

 

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