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 旧怪談 耳袋より 幽ブックス
著者
京極夏彦/著
出版社
メディアファクトリー
定価
税込価格 1,000円
第一刷発行
2007/07
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ISBN 978-4-8401-1879-8

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怪談専門誌『幽』での連載「旧耳袋」が児童書として単行本化。江戸の奇談随筆『耳袋』(原文も収録)を、京極夏彦によって現代怪談に仕立て上げられた意欲作。京極夏彦の著作では、これが初の児童書となる注目作。
 
旧怪談 耳袋より 幽ブックス 京極夏彦/著

本の要約

江戸時代に聞き集めた、怪しい話、奇妙な話。

[目次]
うずくまる―番町にて奇物に逢ふ事;覚えてない―獸の衣類等不分明事;ただいま―妖談の事;ぼろぼろ―貳拾年を經て歸りし者の事;真っ黒―外山屋舗怪談の事;どすん―戯場物爲怪死事;妻でも狐でも―霊氣狐を頼み過酒を止めし事;遺言にするほど―猫の怪異の事;見てました―摩魅不思議の事;正直者―鬼僕の事;つけたのは誰―不思議なしとも難極事;誰が作った―下女の幽霊主家へ来たりし事;何がしたい―怪竃の事;どこに居た―狐狸の為に狂死せし女の事;寸分違わぬ―河童の事;引いてみた―幽霊なきとも難申事;もう臭わない―藝州引馬妖怪の事;なぜに虻―人魂の事;小さな指―頭痛の神の事;可愛がるから―猫の怪の事;やや薄い―赤阪與力の妻亡霊の事;あっちも―奇病の事;がしゃん―あすは川亀怪の事;座頭でないなら―不義に不義の禍ある事;効き目―貧窮神の事;プライド―義は命より重き事;気のせい―怪刀の事;もうすぐ―怪妊の事;百年の間―菊むしの事;於菊蟲再談の事;抜ける途中―人魂の起發を見し物語の事;血は出たけれど―上杉家明長屋怪異の事;別人―作佛祟の事;さわるな―神祟なきとも難申事;とりかえし―猫人に付きし事


オススメな本 内容抜粋

覚えてない

Fさんは大坂で開業医をしている。
腕が良かったのか、遠方からの患者もそこそこあったし、往診の依頼も多く
あった。
そのFさんが真田山の麓まで往診に出向いた時のことだ。
往診といっても急患や重病人のたぐいではない。真田山にはFさんの知り
合いのお年寄りが一人住んでいた。この人は大変な物知りで、いわゆる通人でも
あったから、Fさんは診察がてら訪れてはその人と話をするのを楽しみにしてい
たのだ。何ぶん高齢であるから一応診察らしきことはするのだが、持病があるわ
けでもなく、いたって健康な老人で、往診とは名ばかりのご機嫌伺いに近い訪問
だったのである。
久しぶりでもあったから、軽く問診などした後、縁側に座っていただきものだ
というぼた餅などをご馳走になりながら四方山話をした。
何を尋ねても老人はにこにこと笑って答えてくれるのが常である。
夕暮れ近くまで和やかに談笑していると、庭先に何やらものものしい雰囲気の
男が現れた。
Fさんはその男をひと目見て、衣服の着こなしが爽やかだなと、そんなふうに
思ったそうである。
男は庭を通って真っ直ぐに老人の前まで進むと、
「用事があって遠くへ出向きますので、暫しのおいとま乞いに参りました」
と言って頭を下げた。
老人はそうかそうかと嬉しそうに言って、手を叩いて使用人を呼び、ぼた餅を
もうひとつ持ってきなさいと言いつけた。それからFさんに男を紹介した。藤
森山に住んでいる者だということだったが、どういうわけか名前は教えてくれな
かったそうである。
やがて盆に載せられたぼた餅が出された。


(本文P. 4〜5より引用)

 

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