偽りからのスタート

「あ〜！！　超おなか減ったし〜っ♪♪」
待ちに待った昼休み。
美嘉はいつものように机の上で弁当を開く。
学校は面倒だけど、同じクラスで仲良くなったアヤとユカと一
緒に弁当を食べるのが学校生活の中で唯一の楽しみな時間だ。
−田原美嘉−
今年の４月高校に入学したばかりの高校一年生。
入学してからまだ三カ月足らずだけれど、仲良しで気の合う友
達が出来て、結構充実した毎日を過ごしていた。
背が低いうえに顔が幼いので、実際の歳よりも下に見られがち
なのが今の一番の悩みだ。
頭がいいわけでもなく、特別可愛いってわけでもない。
特技なんてないし、将来の夢なんてあるわけもない。
中学を卒業してすぐに染めた明るい茶色のストレート髪。
ほんのりと淡いメイクがまだあまりなじんでいない今日この
頃。
中学校からわりと平凡な生活を送ってきた。
普通に友達もいた。
それなりに恋もして、付き合った人もいた。
だけど共通しているのはどの恋も短期間で終わりを告げている
という事。
本当の恋って…何？？そんなの知らない。
知っているのはすぐに終わってしまうはかない恋、ただ一つだ
け。
恋なんて別にしなくてもいい、そう思っていたのに。
そんな中…君に出会った。
このまま平凡に終わるはずだった美嘉の人生は、君に出会った
事によって変わっていく…。
いつものように、美嘉とアヤとユカの三人は夢中になってもく
もくと弁当を食べていた。
食事の時って、なぜ無言になってしまうのだろう。
その時教室のドアがガラガラと音をたてて開き、それと同時に
ポケットに手を入れた、がに股の男が三人の元へと近づいてきた。
その男は三人の前に立ち止まり、軽い口調で話し始める。
「こんちわ〜！　俺の名前はノゾム。隣のクラスなんだけど〜
知ってる？」
一瞬だけ目を合わせる三人。
しかしそのまま知らんぷりをして弁当を食べ続ける。
高校に入学してから、彼の…
ノゾムの悪いうわさをたくさん聞いた。
女ったらしで手が早い、かなりの遊び人。
実際、ノゾムは毎日のように違う女を連れて校内を歩いている
のだから、悪いうわさがたっても仕方がない。
ノゾムに気をつけろ！”