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 真夏の航海 
著者
トルーマン・カポーティ/著 安西水丸/訳
出版社
ランダムハウス講談社
定価
税込価格 1,680円
第一刷発行
2006/09
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ISBN 4-270-00142-9

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カポーティ 幻の処女作ついに刊行!
 

本の要約

グレディ17歳。危険なラブ・ストーリー!
マンハッタンとブルックリン。
ニューヨークを無軌道に疾走する青春の刹那!

59丁目を右に曲り、車は横滑りにクイーンズボロー橋を暴走した。橋の下では河を運行する船のサイレンがむなしく響いていた。
朝の空は、彼らが今までに見たことのない色に変化していた。
「くそっ、死んじまうぞ!」
ガンプが叫んだ。しかし彼はハンドルからグレディの手を引き離すことができなかった。
グレディは言った。
「そうよ」

(本文より)


オススメな本 内容抜粋

第一章

「あなたってふしぎな子ね」
ルーシーは娘のグレディに言った。グレディは中央に飾られているバラやシダをテ
ーブル越しに見つめ、穏やかな笑みをうかべた。
そう、わたしってふしぎかも。
グレディはそうおもっていることに満足した。しかし、八歳年上で、すでに結婚も
しており、平凡そのもののアップルは言った。
「グレディはただ間抜けなだけなのよ。ああ、ママ、わたしもママたちと一緒に行け
たらいいなあ。考えてみて、ママたち来週の今頃はパリで朝食してるのよ。ジョージ
はわたしたちのこと、そのうち連れてってやるって約束してるけど、どうなることか
しら」
彼女は話をやめて、妹を見た。
「グレディ、あなたどうしてこんな死んだような夏のニューヨークに残りたいの」
こんなことくり返し言うのはやめてほしい。そして、グレディは両親が自分を一人
にして旅に行ってくれることを願っていた。今はその船出の朝だ。
グレディには隠していることがある。それは誰にも知られたくないことだった。
『今までここで夏を過したことなんてないの」
グレディは言って、母や姉から目をそらし、窓の外を見た。行き交う車は陽射しを
反射して、六月のセントラルパークの朝は静かだった。陽射し。初夏の光は、春の柔
らかな緑の葉から水分を奪い、プラザホテルに面した樹木の問から射し込んでくる。
グレディたちはそこで朝食をとっていた。
「わたしってひねくれてるのよ。どうでもいいの」
グレデイはアップルに言い、気まずい笑みをうかべた。自分がそんなことを言った
のは間違いだとおもったのだ。家族は、この頃のグレディが、ますますひねくれ者に
なってきたと感じているようだ。
グレディは、十四歳の時に、突然、恐ろしく、鋭い感受性を身につけた。彼女は母
親が自分を本当に好きでなんかないけれど、愛してくれてはいるのだと気づいた。は
じめは、母親が自分を、アップルよりずっと陰気で、ずっと頑固で、ずっと可愛げが
ないとおもっているからだと考えた。しかし、その後、特にアップルにとっては痛々
しいことだったのだが、グレディの方がはるかにきれいなことがはっきりすると、グ
レディは、母親がなぜそんなことを考えるのか、いちいち詮索するのをやめることに
した。やがて、もちろん消極的な考えだが、こんなこともわかった。少女としてのグ
レディから見て、母をそんなに好きではないということだ。それでも二人からそれが
うかがえることはほとんどなかった。実際、なにやかやといざこざに満ちた家だった
けれど、さりげなく気取りという家具で内装されていたのだ。
マクニール夫人は自分の手をグレディの手に添えて言った。


(本文P. 9〜11より引用)

 

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