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 少し変わった子あります
著者
森博嗣/著
出版社
文芸春秋
定価
税込価格 1,450円
第一刷発行
2006/08
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ISBN 4-16-325200-2

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失踪した後輩が通っていたのは、いっぷう変わった料理店。予約のたびに場所が変わり、毎回違う若い女性が食事に相伴してくれる…。 孤独とは、なんと美しいものか。極上の森博嗣ワールド
 

本の要約

大学教授の小山は、かねて後輩の荒木から勧められていた料理店に、ふと行ってみる気になった。当の荒木がいつのまにか研究室に来なくなり、気がついたら行方不明になっていたからだ。――それは変わった料理店だった。場所は予約のたびに変わり、決まった店員は女将ひとりだけ。そして、毎回、そのつど違う若い女性が食事に相伴してくれるのだ。とまどいつつも、その店のもつ雰囲気に惹かれてゆく小山。孤独とは、何と美しいものなのか。圧倒的な余韻を残す、味わい深い作品です。





オススメな本 内容抜粋


もともとは後輩の馨から聞いた話である。掴どころのない内容で、つまり短いフレー
ズでは容易に還元できない情報だったためか、流れるままに引っ掛かるものもなく、記憶
の海の浅瀬にも留まらず、ずいぶんと深みにまで沈んでいたようだ。だから、荒木が行方
不明だと聞かされるまで、私はすっかりそのことを忘れていた。
一年半ほどまえ、荒木がドイツへ在外研究員として短期留学する直前に、私は彼と会っ
た。場所はしっかりとは覚えていないが、最初に食事をした料亭からタクシーに乗って繁
華街へ出て、ビルの地下にあるパブに入ったように記憶している。いつもそうなのだが、
荒木が知っている店らしかった。そのときに、たしかにその話を彼から聞いた。
固有名詞は出なかったように思う。おかしな店がある。否、店という実体はなく、場所
はその都度借りているらしく、方々を転々と移っているという。接客に現れるのは三十代
の女将が一人だけ。何の店なのか、と尋ねると、よくわからない、と荒木は答えるのであ
る。ただ、料理を食べ、酒を飲むことはできるらしい。
「まあ、強いて言うならば、静けさが売りものですかね。たった一人でゆっくりと食事が
できる。他の客と顔を合わせることもない」
なんだ、つまりは高級料亭の類か、と私は思った。しかし、問題は料理以外のことだと
いう。
「食べ終わって茶を飲んでいると、女将が挨拶にやってくる。今日の料理はいかがでした
か、と尋ねられるから、うん、美味かったよ、と答えるのですが、それでは話が終わって
しまう」荒木は、そこで変な笑い方をした。知らない人が見たら、呼吸系の具合でも悪い
のか、と勘違いするだろう。しかし、それが彼の笑い方なのだ。
「終わったら、いかんのかね?」私は尋ねた。
「まあ、なんというのか、すっきりとした美人でしてね」
「その女将が?」


(本文P.8〜9より引用)

 

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