きいろいゾウ　西加奈子／著　ＢＯＯＫＳルーエのＮＥＴ通販

　きいろいゾウ

著者	西加奈子／著
出版社	小学館
定価	税込価格　1,575円
第一刷発行	2006/03
	ISBN　4-09-386162-5 　★　会員登録はこちら（1500円以上で宅配送料無料）⇒

『さくら』が２０万部を突破した著者が紡ぐ書き下ろし恋愛長編小説。田舎に暮らす大阪弁の若い夫婦の愛に溢れた日常を、のびやかな筆致で描く

ちっぽけな夫婦の大きな愛の物語――。「ムコさん」「ツマ｣と呼び合う､片田舎に暮らす大阪弁の若夫婦。売れない小説家のムコは､周囲の生き物の声が聞こえてしまうツマをやさしく見守っていた･･･。

オススメな本　内容抜粋

１
お風呂に入ろうと思って服を脱いだら、浴槽に茄で上がった蟹が浮いていた。
マッチ箱くらいの大きさで、はさみなんかも小さくて、体に黒い斑点がある。いつも裏の用水路か
らやってきて、お行儀の悪い私たちがこぼした米粒を狙っているあいつかもしれないと、慌ててムコ
さんを呼んだら、ムコさんは廊下の板をみしみしいわせながら、こちらに歩いてきた。
「ムコさん、あいつが死んでる、茄で上がってる。」
「服を着なさいな。」
「あいつ」というのは、蟹の正式な名前。ガラス戸を開けてその姿を見たムコさんが、「またあいつが
来た！」と、いつも言うから。
そして「ムコさん」というのも、私の旦那さまの正式な名前。「武辜歩」という名前、変わってるし、
最初見たときは読めなかった。私のお婿さんの、ムコさん。そして、私の名前は、じゃーん、ツマと
いいます。すごいでしょ、ムコとツマ。もう、出会う運命にあった！とゆう、感じ。ちなみに本名
は、妻利愛子という。
「釜茄での刑や！ひさんー。」
「服を着なさいなって。」
「なんでこんなとこまで来たんやろ？」

（本文Ｐ. より引用）

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