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 愛してるって、どう言うの? 生きる意味を探す旅の途中で
著者
高遠菜穂子/著
出版社
文芸社
定価
税込価格 1050円
第一刷発行
2002/07
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ISBN 4-8355-4074-3
 
高遠菜穂子さんの原点 ボランティア活動の根底には何があるのか? 高遠菜穂子さんの生き方を通して、その本質に迫る。
 

本の要約

第1章 インド・カルカッタ;第2章 南インド;第3章 西インド大地震;第4章 タイ・バンコク;第5章 インド・ダラムサラ;第6章 ネパール;第7章 再び、カルカッタ;第8章 タイ;第9章 カンボジア;第10章 帰国、そして再びカンボジアへ



オススメな本 内容抜粋

まえがき

30歳になって、独身で、現在恋人もいなくて、6年も続けてきた店を閉めて、インドに行くって?
なんでそうなるの?
そんな問いかけに私は「夢だったんです」と答えることにしている。
なんだかうまく説明ができないし、話せば長くなってしまう。
だから、一言で答えることにしている。
でも、私自身なにかしつくりこないのがホントのところだけれども……。「夢」というのとはチョット違う。夢はもっと先にあるような気がしてる。
そこに辿りつくための一つの過程。
それが一番適した言い方かもしれない。
小さい頃、「将来の夢は何ですか?」という類の間いかけにはいつも困惑していた。
ピアノの先生とか、母と同じ美容師とか、あくまでも無難な答えを選び、周囲を安心させ、そんな自分をもどかしく思っていた。
基本的には変わっていないのだと思う。
私の夢は、職業などのハッキリした名称を持っていないのだ。
高校3年の時の大失恋をきっかけに、私は大学進学のため上京した。
生まれ育った街以外知らなかった私にとっては、まるで異国の地のようだった。
いろんな方言が飛び交い、冗談抜きで日本語を話しているとは思えなかった。
そんな新世界で見聞きするものすべてが初めて考えることばかりで、日々の生活にこんなにも考えることがあるなんて目からウロコだった。
駅の構内で、手足の不自由な人が自分で描いた絵(おそらく口で筆をくわえて)を売っている光景。
ゴミの分別作業。当番でまわってきた募金活動。なりたい自分に近づくためには、自分のことをもっと知らなければならなくて、もっと広い世界に自分を放り出す必要があった。
テレビや本や地図の上ではもう欲求を満たせなかった。
初めて訪れた憧れのアメリカ。その頃は、とにかくアメリカに傾倒していたこと、そして表面的なカルチャーショックばかりが強烈だった。
ハンバーガーのデカさ、ファッショナブルなクラブの世界、円高バンザイでショッピング三昧。
受け身オンリーの楽しい海外旅行だった。後に、改めて留学という形で再びアメリカを訪れた時には、さすがに人間とも深くつきあったし、英語力だってどこが自分の弱点なのか認識せざるを得なかった。
でも、これがいいんだよね。コミュニケーション術や自分の考えを持つことの大切さはこの時に学んだと思う。世の中にはいろんな考えがあるってこともつくづくわかった。
そして理不尽なこともたくさんあるんだってことも思い知らされた。
この頃から、“なりたい自分”が映像として頭の中に浮かぶようになっていた。
それは、理不尽さに立ち向かうことのできる強い自分。
攻撃する強さではなく、包み込むやさしさを持った自分。
頭の中の映像は、どこか知らない場所で着飾ることもせず、ただひたすらに奉仕活動に専念している私を映し出していた。
でも、あまりにも抽象的すぎて他人には言えなかった。その舞台はたぶん、外国の中でも最も未知の国なのではないかという予感も誰にも打ち明けることはなかった。
そのうち、周囲では30歳まではやりたいことをやるんだと言って世界に飛び立っていく人たちがいて、それなら私は30歳からはじめようと考えるようになっていった。
私にはきっと長い準備期間が必要だったのだと思う。
27歳の時、世界を飛びまわっていた友人が私をベトナムに誘った。
そして、ついに私は自分に最も欠落しているものを知ることになったのだった。
友人は、様々な事情でストリートチルドレンとなった子どもたちを受け入れる“子どもの家”に私を連れていってくれた。
アジアの純真、ベトナムのストリートチルドレンとの出会いは私を大きく揺さぶった。

 

 

(本文P. 3〜5より引用)


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