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 お先、真っ白
著者
たかのてるこ/著
出版社
扶桑社
定価
本体価格 1143円+税
第一刷発行
2003/12
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ISBN 4-594-04272-4
 
“銀座OL”、たかのてるこ初の“日常”エッセイ、ついに登場! おかしくってちょっぴりせつなく、“読む栄養ドリンク剤”です
 

本の要約

母は50歳で「腹話術師」デビュー、父は70歳でヒマラヤへ。おかしくて、ちょっぴりせつない、世界でいちばん笑える家族!!30カ国を駆ける“旅人OL”出生の秘密がここに!

『ガンジス河でバタフライ』『モロッコで断食(ラマダーン)』などの紀行エッセイを出版するかたわら、自ら出演、兼プロデュースの旅ドキュメンタリー番組を制作する“銀座OL”、たかのてるこ初の“日常”エッセイ、ついに登場!読み出したら止まらない“てるこワールド”は、おかしくってちょっぴりせつなく、読んだら元気が沸いてくる、まさに“読む栄養ドリンク剤”です。本書は、「たかのてるこ」をつくったおもしろ家族、ゆかいな仲間の話を中心に有り余るネタの中から厳選した書下ろしです。


たかのてるこ

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銀座で働くOLにして、有給休暇で世界を駆ける旅人。「地球はひとつ、世界中の人と仲良くなれる!」と信じ、アジア、中東、南米、アフリカなどを一人旅する。今までに訪れた国は、世界33カ国。

1971年、大阪生まれ。
1993年、映画会社の東映に入社。
1998年、本人が出演と制作を兼ねた、
インドの旅番組がTBSで放送され話題に。
2000年、紀行エッセイ『ガンジス河でバタフライ』(幻冬舎)
でデビュー。

以後、本人出演の旅番組『銀座OL世界をゆく!』シリーズ(フジテレビ系)などを制作するかたわら、紀行エッセイを出版。
他の著作は、『モロッコで断食(ラマダーン)』『モンキームーンの輝く夜に』(ともに幻冬舎)。

◆たかのてるこHP◆
http://www.toei.co.jp/tv/special/teruko/



オススメな本 内容抜粋

おかんの
お見合い

その日、私は茶の間のテレビでドラマを見ていた。
あれは、ヒロインの女の子が恋に落ち、相手の男に向かって「あなたが好き!」なんてことを言ったときだったと思うが、隣にいたおかんが、なんでもないことを言うような感じで言ったのだ。
「私は生まれてこの方、人を好きになったことが一度もないから、こういう恋したときの気持ちとか、『愛してる』とかいう気持ちがまったく分からんわ〜」
私は母の言葉に、びっくりたまげた。
たとえば、「実は、結婚する前、好きな人がおってん」と言われたのなら、まだ話は分かる。
結婚って、大好きな人としたからってうまくいくモノじゃないんだなあとか、一度失恋したからってしょげることないんだなあとか、今後の人生において、何かしらの参考になるもの。
だが、「今まで恋したことがない。愛も分からん」となると、「え?じゃあお父さんのこと好きちゃうの?」「子どもって、愛の結晶とちゃうの?」
「じゃあなんで私はここにおるねん?」ということになり、自分の存在理由にかかわってくる大問題ではないか。
物心ついたときからラブソングを聞き、テレビや映画でラブストーリーを見て育った私にしてみれば、男女はホレ合って一緒になるものだとばかり思っていた。
だから、小学生の頃、自分の親が見合い結婚だったことを知ったときもかなり驚いたのだが、今度はそれをはるかに上回る、爆弾発言である。
ウチの両親が結婚したのは、母が21歳で、父が29歳のときだったそうな。
短大を出て銀行に勤め始めた母は、周囲のススメもあって、就職してまだ3ヵ月もたたないうちに4回もお見合いをしたらしい。
で、5回目のお見合いで父と出会い、就職してたったの10ヵ月で会社を寿退社したというのだ(なんという腰掛けOLぶり!)。
「で、それまでの4回の縁談は、どっちが断ったん?」
と私が聞くと、おかんは、
「そら全部、私の方から断らせてもらったに決まってるがな」
と、ちょっと自慢げに、小鼻をうごめかせて言った。まるで、この私がフラれるワケないやろ、と言わんばかりの勢いだ。
恋愛経験のないおかんにとって、こっち方面の話で威張れるのは「見合いでフラれたことはない!」という点だけであるらしい。
「初め、お父さんを見たとき、エラいオッサンやなあと思ったのを覚えてるわ」
「29歳ですでにオッサン!?なのに、なんでそんな人と結婚したんよ?」
「まあ……カン違いしてしもたんやろな」
母曰く、4度目に見合いした人と、5度目の見合い相手だった父が、あまりにもかけ離れたキャラクターだったのだという。
「4度目に見合いした人とも、見合い後に2回ぐらいデートしたんや。ほんまに繊細で、気を遣ってくれる人でな、100メートル歩いただけで、『お疲れになりませんか?』『お足の方は大丈夫ですか?』とか、イチイチ言うてくれる人やったわ。優しくて、思いやりのある人やったけど、ちょっと女々しい人に思えてなあ」
「で、その人を断って、お父さんと見合いすることになったというワケか」
「お父さん、いっつも淡々としてて、あっさりしてはるやろ?そやから見合い後にデートしたときも、一緒に歩いてて『アレ?どこ行ったんやろ?』と思ったら、トットコトットコ早足で、ずいぶん前の方を歩いてはったりするんよ。マイペースな人やなあと思ってな」
駆け足で、懸命に父に追いつこうとする、母の映像が思い浮かぶ。
父は今もそうだ。
背が高く体も大きいせいか、ふだんはのんぴりしているクセに、歩くのだけは速い。
オンリーマイウェイな性格だから、デートで相手の歩調に合わせて歩く、なんてことを思いつきもしなかったんだろう。
そんな父を見て、母は「オレについてこい!」ばりの男気を持った人だと思ってしまったらしかった。
「前の人は、デートした後もちゃんとタクシーで家まで送り届けてくれて、『お嬢さんをお送りしました』とか律儀に挨拶までしてくれる人やったんや。
そやけど、お父さんとデートしたときはタクシーなんてもってのほかって感じで、お互い、バスで家に帰ることになってな。
で、バス停に着いたら、すぐにお父さんの乗るバスが来たんよ。
普通やったら、そのバスをやり過ごして、女の方が乗るバスが来るのを待って見送ってくれたりするもんやろ?それやのに、お父さん、『じゃあお先に』とかナントカ言うて、自分だけバスに乗ってさっさと帰ってしもたんよ」
「はあ〜、で、そこがまた男らしいと?」
「前の見合い相手は、何かあるとすぐタクシーをつかまえてくれて、『お足はお疲れじやありませんか?』を連発する人やったから、サッパリしてるお父さんが男らしく思えたんやろうな。ほんまは、ただ自分勝手でクールな性格やっただけやのに、エエ風にカン違いしてしもたんや」

(本文P. 6〜9より引用)


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