13歳の弟は猟奇殺人犯!?14歳の「ぼく」の孤独な闘いが始まった。今を生きる子どもたちの光と影をみずみずしく描く問題作。麗らかな春の朝、緑豊かなニュータウンで九歳の女の子の遺体が発見された!現場に残された謎のサインは「夜の王子」。嵐の夜、十三歳の少年の補導で事件は解決するが、関係者にとっての本当の苦しみはそのときから始まった。崩壊する家族、変質する地域社会、沈黙を守る学校。「夜の王子」の真実と犯行の理由を求めて、十四歳の兄が、ひとりきりの困難な調査を開始した。 植物観察を愛する男の子、三村幹生は中学二年。今時珍しいニキビ面であだ名は「ジャガ」。彼の十三歳の弟が小学生の女児を殺すという凶悪事件を起こし、一家は嵐の渦中に投げ込まれます。ジャガは、女装が趣味の級長、下ネタ発言を連発する美少女など癖の強い友人たちの協力を得て、何が弟を犯行に向かわせたのか必死に探ります。期待の新人が放つ書き下ろし二作目。
五月十八日、曇り空の月曜日午前九時、山崎邦昭は朝風新聞東野支局にかかってきた電話を取った。 最初のベルで飛びつくのが山崎の仕事である。 「はい、こちら東野支局」 「よう、ボーイか。夢見山署管内で小学生女児が行方不明になっているらしい。もうすぐ公開捜査に切りかわるそうなので、おって連絡を入れる」 聞き慣れた県警担当の須田淳の低い声。常陸県の県庁所在地である湊市中区の県警本部七階からの電話だった。 「記者クラブの様子はどうですか?」 「事件になるかどうかわからんからな。まだ落ち着いたもんだ」 受話器を置くと、デスク横のソファでライバル社の朝刊に目を通していた支局長の津野英彦が、鼻先の老眼鏡越しに山崎を見つめた。いつもの白いシャツに二十年は使いこんだネクタイの化石をさげている。
(本文P. 6〜9より引用)
このページの画像、引用は出版社、または著者のご了解を得ています.
当サイトが引用している著作物に対する著作権は、その製(創)作者・出版社に帰属します。 無断でコピー、転写、リンク等、一切をお断りします。
Copyright (C) 2001 books ruhe. All rights reserved.