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 ファインマンさん最後の授業
著者
レナード・ムロディナウ/著 安平文子/訳
出版社
メディアファクトリー
定価
本体価格 1800円+税
第一刷発行
2003/11
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ISBN 4-8401-0897-8
 
若手科学者と二度目のガン手術の直後で年老いたファインマン先生との最後の交流。科学や人生の素晴らしさを静かな交流の中に見つめる、珠玉のノンフィクション。
 

本の要約

「なぜデカルトは虹を研究したと思う?虹を美しいと思ったからだよ・・・。」若手科学者と二度目のガン手術の直後で、年老いた偉大な科学者が静かに教えてくれたこと。科学や人生の素晴らしさをユーモアいっぱいに描いた、珠玉のノンフィクションです。



オススメな本 内容抜粋

はしがき
物理学の分野で博士号を取るアメリカ人は、年に八百人に満たない。
世界中でも、物理に限れば、その数は数千程度のものだろう。
ところが、このわずかな人数の中から、わたしたちの暮らしや考え方を左右する発見が生まれ、新しい物が生み出されている。
X線、レーザー、電波、トランジスター、原子力、核兵器といったものから、時空間に対する考え方、宇宙についての認識まで、これらはすべて、ひたむきにその道を研究する専門家たちが、この世に送り出してきた。
物理学者になるだけで、世界を変える可能性を無限に秘めているのだ。
歴史や伝統の一翼を担う可能性さえある。
物理学者にとって一番大事なのは、大学院時代と、その直後だ。
自分の力を知り、キャリアを積む時期だからである。
本書は、まさにその時期、わたしが博士号を取った直後の一九八一年、世界でも有数の研究機関であるカリフォルニアエ科大学(カルテク)の研究員になった時代を舞台にしている。
当時、わたしは、普通では考えられないような経験をした。
カルテクに赴任した時は、不 安で、びくびくしていたし、自分の才能に自信が持てず、将来へのビジョンも全くはっきりしていなかった。
大変運よく、わたしの研究室は、今世紀最高の物理学者の一人、リチャード・ファインマンの部屋のすぐそばにあった。
一九八六年に、スペースシャトル「チャレンジャー号」事故調査委員会の記者会見の席で、ガスケット(Oリング)がなぜ欠損したかを、全米が見守る中で、実験してみせたあのファインマン氏だ。
ガスケットをコップの氷水に沈めてから取りだし、テーブルの上でたたきつぶして、低温ではもろくなるという事実を見せつけたのである。
あれこそまさに、彼の面目躍如の時だった。
コンピューター・モデルを蹴散らした常識の勝利、方程式を物ともしなかった洞察力の勝利をまざまざと見せつけたからだ。
この一年前に、ファインマンは『ご冗談でしょう、ファインマンさん』という魅力的な自伝を出版し、これは大ベストセラーになった。
ただ、現代のアインシュタインと言われるほど誰もが知る人となったのは、その死後、一九八八年以降だった。
この本に書かれている一九八一年当時、彼はまだ一般社会ではほとんど無名の存在だったが、物理学の世界ではすでに何十年もの間、伝説的な人物だったのだ。
わたしがカルテクに特別研究員(フェローシップ。現在のカルテクの物理学・数学・天文学部の場合、数年以内に博士号を取ったた者を対象にしており、期間は三年以内。年度ごとに、研究奨励金と給料が支給される。)として招かれたのは、「無限の次元での量子理論」、というわたしの博士論文のテーマが、ある著名な物理学者の目に留まったからだ。しかし、わたしには本当にここに来る資格があったのだろうか?研究室のすぐそばには二人のノーベル賞受賞者、まわりは国中から集まった優秀な学生ばかり。
来る日も来る日も、わたしは研究室に通っては、あれこれ考えた。
物理学のまだ解決されていない大きな問題とはどんなものか?何の考えも浮かんで来なかった。
自分の過去の論文はまぐれ当たりにすぎないし、もう価値のある発見は二度とできない、そう思えてしかたがなかった。
カルテクが、全米の大学の中でも非常に自殺率が高い理由が身にしみて分かった。
そんなある日、わたしは勇気を出して、ファインマンの研究室のドアをノックしてみた。
意外にも、ファインマンはわたしを歓迎してくれた。
彼は二度目のガンの手術を受けたばかりだった。
結局、このガンが原因で彼は亡くなるのだが、翌年にかけての二年間、わたしたち二人は何度となく話をし、わたしはいろんな質問をファインマンにぶつけてみた。
たとえば、「何かを成し遂げるだけの能力が自分にあるのかどうか、どうすれば分かりますか?」とか、「科学者は、どんなふうに物事を考えればいいんでしょう?」「創造性の本質とは?」といった質問だった。
人生の終わりを迎えようとしているこの科学者との会話から、わたしは、科学とは何か?、科学者とは何か?という疑問への答えを見つけ出した。

(本文P. 11〜13より引用)

 

 

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