誘拐犯の娘が大新聞社の記者に内定。とスクープされた20年前の事件の再調査を託された窓際記者が、執念であばく封印された「真実」。 【第49回江戸川乱歩賞受賞作】誘拐犯の娘が記者に内定。その時、大新聞社は震撼した!犯人、被害者、新聞記者、刑事---「家族の絆」と「事件の傷跡」。20年前の新生児誘拐事件で封印された真実が、いま明らかに。選考委員全員がミステリーとしての完成度に酔いしれた、ハードボイルド長編!
ドアを開けた岸辺広告局長が肩をすくめ、武藤の耳元で曝いた。 「さっきまでは穏やかに話してたんだがな、だんだん激してきて、ああなっちまったんだ。相手は誰だと思う?」 武藤は首を振った。 「秀峰出版の乾社長だ」 武藤はため息をついた。 「これからしばらくの間、うちと秀峰の間でドンパチが続くだろうな。書籍や雑誌の広告出稿も期待できん。それもこれも、すべてお前さんが原因だ」 半ば諦めたような口調でそう言って、広告局長は部屋の中央にある応接セットに腰を下ろした。 杉野は、とても全国紙の社長とは思えないような捨て台詞を吐いて、叩きつけるように受話器を置いた。
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