これ一冊で昭和史丸わかり。「芥川龍之介自殺」から「バブル経済」までの激動の昭和史を一気に駆けめぐる知的漫才を太田光が執筆。
今回の日本史原論は今までと少し違う。 “昭和”という時代に限定した。 元々歴史にうとい私が、この日本史原論という連載を始めて、少しずつ"日本"という国のかたちを意識し感じるようになったことがある。 それは学校で習う日本史の中に"近代"の分量があまりにも少ないのではないかということだ。徳川家康や聖徳太子など、何百年も前の日本の歴史はとても細かく習うのに、明治維新以降から現代に通じる日本の歴史はほとんど習わない。 そこだけすっ飛ばしてしまっている。だから、日本という国の流れが頭の中で繋がらない。 ある時代からプッツリと分断されて、突然現代という日本に存在している"私という日本人"を感じることになる。 明治維新以降から現代にいたるまで、日本という国はどういうふうにかたちを変えてきたのか。 それをもっと詳しく知りたいという思いが強くなった。 その時代のことを知らなければ、北朝鮮のことも、有事立法のこともわからない。 明治、大正、昭和。 中でも一番知りたいのは現代に一番近い昭和の歴史だ。 私は常々歴史を学ぶのだったら邪馬台国の昔からやるよりも、現代から逆に過去へさかのぼっていった方がいいのではないかと思っていた。 そういった意味で選んだのが昭和という時代だった。 言い方は変だが、平成という現代に生きる私達にとって、"昭和"というのは一番タイムリーな言葉なのではないかと思った。 しかしいざ始めてみて感じたのは、昭和というつい最近の時代を歴史としてとらえるのが、いかに難しいかということだった。 一つ一つの出来事、そのどれもが未だに決着がついてない。 歴史的な結論が出ていないのだ。 この本のタイトルは『昭和は遠くなりにけり』だが、私の実感は『昭和は今も続いてる』だ。 この昭和という時代を歴史として子供達に教えるのには相当の覚悟がいるだろう。 なぜなら教師達は、まだ結論の出ていない、今後歴史的にどう判決が下るかわからない事柄を、自分なりの解釈で判定することが必要になるからだ。 何百年も前の、もう動くことのない歴史ならいくらでも解釈できる。 しかし昭和という歴史を解釈するには、現代に生きる日本人として自分がどういう思想を持っていて、どういう立場に立っている人間なのかを表明することを迫られることになる。 だから学校では、近代を教えることを避けているのではないか。 そんな気がした。 今回も、連載当初からお世話になっている田中聡さんに、資料集め、並びに無知な私に対してわかりやすい解説をしていただき大変お世話になりました。 心から感謝します。
太田光
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