生病検査薬・性病検査薬
著者
飯島愛/著
出版社
朝日新聞社
定価
本体価格 1200円+税
第一刷発行
2003/06
ISBN 4-02-257844-0
 
実売200万部に迫った超ベストセラー『プラトニック・セックス』の著者・飯島愛が、日常の性からテロと人間の生命まで幅広いテーマで思いきり自由に語った初のダイナミック・エッセー。コケティッシュで辛辣な持ち味が満載!ググッと迫ります。
 

飯島愛さんは言わずと知れた超ベストセラー『プラトニック・セックス』の著者。
 今回のエッセー集は、売れっ子になるまでの知られざる半生を赤裸々に綴って200万部を売ったこの作品以来、2年半ぶりにリリースする単行本です。
 書名は『生病検査薬≒性病検査薬(せいびょうけんさやく)』。自らが性病検査を受けたときに、いろいろな思いが交錯したことが、この風変わりなタイトルのきっかけとなりました。
 内容は、ホテルの一室で中年男が数本のローソクを取り出した“危ない体験”、昔の恋人との「マル秘ビデオ」の保存方法などちょっぴりエッチな告白にくわえて、テレビのバラエティ番組の舞台裏のバクロから、ニューヨーク同時多発テロや生命への思い、最近の自分自身の“恋愛事情”etc……なんでもありの幅広い話題をピックアップ。どのエッセイにも、ユーモラスでコケティッシュな著者の持ち味が満載されています。
「週刊朝日」で好評連載中のコラム「飯島愛の錦糸町風印税生活」から厳選したうえ、新たに書き下ろしエッセイ多数を加えて構成しました。



性病検査薬

一度、性病の検査をした。
簡単なものだった。
子供のころ、学校で配布された検便検査に似たそれは、自分で説明どおりに行い名前を記入し、センターに送ると結果を後日報告される。
そこで問題があれば再検査になるらしいが、とにかく綿棒のような先を膣の奥に挿入させ、それを取り出し、すぐ元の容器にしまう、といった単純作業だ。
わかりやすくいえば、薬局に置いてある妊娠判定剤と似た感覚で必要だと思う。
淋病、クラミジア、ヘルペス、トリコモナス、梅毒、この辺の病名は耳にしたことが誰しもあるはずです。
男だったら一度くらいかかってもいい。いや、かかる方がいいだろう。
性病は、勲章だ。
この栄誉は、女を知らない童貞君や、一途な彼には与えられないのです。
そう、数打ちゃあたる。
に、のっとって考えると、遊んだ分だけ可能性が高いのだから病気を恥じるな、男達!
とはいえ、これが恋人となると話は全く違う。
気付かなかったではすまされない。
許されない行為です。
幸いこのところ、この手の下世話な感じと疎遠でして、経験をもとに筆を進めることが出来ません。
ただ、増えているんですって、性病にかかる若人が……。
男性は、淋病にかかると非常にわかりやすいのですぐに治療します。
排尿の際に、なんとも言えない激痛が走る特徴があるらしく、我慢の限界で皆病院にかけこむ。
発症が早く、問題のSEXから三日後には、痛みを感じ出すので、その問に伝染してしまうあわてんぼうな残念賞。
昨日の夜、大好きな彼が病気持ちの女とベッドを共にしていたなんて知らない彼女。
女性だって痛いんです。
それに、女の子は自分の体調の異変に気付くのが遅いので、さらなる二次被害者を出してしまう可能性が高い。
なんとなく、かゆみや匂いが気にはなっても、なかなか相談することも出来ず、専門書を手に取り、「……かもしれない」と不安にかられても、産婦人科に行く勇気が持てずに過ごしてしまいがちです。
「おまえ、病気だろ」
彼に問いつめられ、心の中では確信する。
でも認めない。
「ちがうもん!」
だって、あなたが伝染したかも知れないじゃん?
性病は、どっちが悪いのかを問いただすことの難しさで言うと難易度が高いので、後味も悪く、ずーっと引きずって嫌みを言ってしまいガチな結果になる。
それに、お医者さんが救いの手を差し伸べるかのようにこう教えてくれる。
「性行為だけじゃなく、ばい菌のついた手や、下着、不衛生にしてると感染しますよ」
これは、一番認めない。
自分が清潔じゃないということだ。
だったら、誰かに伝染された方が言い訳になる。
相手の男性にも、とお医者さんは抗生剤を二週間分出してくれた。
人の保険で、ふざけんな。
そう、保険証は大きな問題だった。
親の扶養家族となっている若い子達が一番の性病保持者であることが間違いない今、この保険証に産婦人科の印鑑が押されるのは非常に困る。
なんせ、親は、子供の妊娠、性病を恥じる。
そして娘を怒るであろう。
でも、一番、傷ついているのは当事者の女の子です。
若い女の子が産婦人科のドアをノックする姿は、いつも無条件に哀しく映ります。
下着をとって、無機質な鉄の上に両足を乗せると看護婦は「楽にしていて下さい」と、
それを固定する作業を淡々とこなしていく。
「はい」とは返事ができない。
「STD」(性感染症)
この性感染症は若者の間で、増加しつづけている。
コンドームを使用しない気持ちはわかるけれど、その無防備な行為の代償は、ときとして余りに残酷だったりする。
クラミジアなどは感染の自覚症状が極めて少ない為、治療する訳がない。
そのまま放っておくと不妊症になってしまう。
更に、子宮頚癌になる原因のなかにもSTDが含まれていると判明している。
癌だと知って誰のせいだと責める心境にはならないだろう。
クラミジア淋病HPV(ヒト パピローマ ウィルス)
恋をしたら、これらの陽性を調べてからSEXするのが理想的。
学校などでどうして調べてあげないのだろうか?
強制的にするもの愛情だ。予防接種はインフルエンザでさえ面倒だから。
いくらSEXするなといっても子供はする。
ならば、コンドームをと謳いかけてもそれすらしない。
それでいい。
だから私は生まれたんだ。
あとは、自分で考えて、自分で責任を問う。
考えたい大切な事は、自分の身体は自分でしか守れないと自覚を強く持たなくてはいけないという事。

そして、私は「生理がおくれてる」と産婦人科に通う。

(本文P.9〜13 より引用)


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