天使のジョン
著者
北川 想子
出版社
白泉社
定価
本体価格 1200円+税
第一刷発行
2003/01
ISBN 4-592-73205-7
若くして逝った作者が心をこめて この世に遺した 珠玉のファンタジー

少女「サキ」が喜んでくれるためには、なにが必要なのか…。
天使の少年がさまざまな出会いをもとに、大切なことを学んでいく心あたたまる物語。

 

 

白泉社から1月20日に『天使のジョン』が発売になりました。

著者の北川想子氏は、毎日新聞主催小さな童話大賞の工藤直子賞を受賞し、将来を嘱望されておりましたが,2000年に病没されました(享年30歳)。
そのことを惜しむ声も大きく、その遺作ともいうべき同書を白泉社から発刊されました。
ファンタジーの中にピュアな感性がやさしく光る、その作風はまさに若い女性をひきつけるに違いありません。

 

 

プロフィール

名 前/北川想子・きたがわそうこ
生まれ/1970年・岐阜県

早稲田大学卒業後、文芸誌「NEVERMORE」で散文作品を発表。
また短歌同人誌「かばん」で短歌を発表(筆名・北川草子)。
91年、毎日新聞社主催小さな童話大賞で工藤直子賞を受賞。
2000年病没。享年30歳。

 

北川想子さん
 

 あのとき、目があったような気がしたのは、ぼくの思いちがいにすぎなかった。

さいしょから、あのひとはぼくをみていなかった。

 あのひとには、ぼくはみえなかったのだ。

 ぼくは、背中に羽のおもみをかんじながら、もしかしたら、あのひとにぼくがみえなかったのは、この羽のせいかもしれない、とかんがえた。

 ぼくは、ぶきように、羽をぱたぱたとうごかした。

すると、ぼくの体は、まるであたりまえのことのようにすうっと地上にういた。

 けれど、それがなんだっていうのだろう。

ぼくは、しばらくこの道を歩いていくことにした。まだうまく歩くことはできないけれど、そのうちには歩くことになれるだろう。いつかは、かろやかに走ることだってできるかもしれない。

あのひとのように。

 ぼくは、一歩、一歩をふみしめるように歩いた。

 道はまっすぐにどこまでもつづき、やがて、空は星でいっぱいになった。

 そして、ぼくは、サキにであった。

(本文より引用)


このページの画像、引用は出版社、または著者のご了解を得ています.

当サイトが引用している著作物に対する著作権は、その製(創)作者・出版社に帰属します。
無断でコピー、転写、リンク等、一切をお断りします。

Copyright (C) 2001 books ruhe. All rights reserved.