覚える技術
著者
アルベルト・オリヴェリオ/著 川本英明/訳
出版社
翔泳社
定価
本体価格 1500円+税
第一刷発行
2002/11
ISBN 4-7981-0312-8 ん
記憶力は鍛えられる! 記憶力をUP↑する 12のテキスト付き。

■目次
第1章 覚えることの意味;第2章 短期記憶と長期記憶;第3章 忘れ去った世界;第4章 驚異的な記憶、あるいは系統化された記憶;第5章 自伝的な記憶;第6章 記憶への信頼と不信;第7章 無意識のうちに記憶する;第8章 記憶と感情;第9章 記憶はどこへ行くのか?

■要旨
知り合いの名前や、つい最近、夕食を食べに行ったレストランなど、ちょっとした名前が“のど元まで出かけていて”なかなか思い出せないことがよくあります。ところが、これらの名前がある日突然、心の中に浮かんでくることがあります。それはいったい、どこから浮かび上がってきたのでしょうか…?―「記憶」のあらゆる側面と、「記憶」と「脳」の関係を知ることで、どんな人でも、いまより上手にものを覚える方法=“覚える技術”を身に付けることができます。

 

脳科学界の重鎮が、あらゆる角度から記憶の本質に迫る! 『海馬』著者の池谷裕二氏推薦。
「記憶」には、「手続き記憶」「陳述記憶」「個人的な記憶」「集団の記憶」など、さまざまな種類があります。人間の脳は記憶をきちんと保存し、ある日ある時・意識する時無意識の時など、自由自在に「記憶の引き出し」から取り出すことができるのです。本文では、こうした基本的な記憶の仕組のみならず、「記憶をイメージ化する」「記憶を映像化する」など、具体的に記憶力を強化するためのテストが計12個紹介されています。情報過多と言われる現代を乗り切るためにも、今こそ“覚える技術”を身に付けよう!

記憶力テスト

第一章 覚えることの意味

記憶のもつ多くの側面
記憶することと経験を理解すること
イメージを視覚化する
●テスト1 イメージ化と視覚化のトレーニング
のどまで出そうな言葉
●テスト2 消えていく記憶?
●テスト3 ヒントと「のどまで出そうな言葉」
記憶の呼び水

第二章 短期記憶と長期記憶

現実の断片
編集作業
記憶はどんなことに干渉されるのか?
●テスト4 似ているものは記憶の干渉を生みだす
記憶の回路
経験の編集作業(コード化)を強化するには
●テスト5 手掛かりから情報を検索する方法
●テスト6 注意力と集中力を強化する

第三章 忘れ去った世界

見失った記憶と消え去った記憶
大脳の側頭葉と海馬
アルコール中毒患者の健忘症
保存された記憶の島
意味記憶とその論理性

第四章 驚異的な記憶、あるいは系統化された記憶

記憶術
驚異的な記憶
●テスト7 場所のメソッド
上手に記憶するための戦略
●テスト8 視覚イメージを探し出す
記憶痕跡、現実世界の映像としての記憶
●テスト9 あなたの学習スタイルは理解型、それとも暗記型
記憶の編集(コード化)と再生
●テスト10 速読と効果的な暗記

第五章 自伝的な記憶

生涯の記憶は脳に埋もれているのか?
記憶の助言者
何が忘却を引き起こすのか?
自伝的な記憶
●テスト11 人生の時期

第六章 記憶への信頼と不信

偽りの記憶
証拠はどこまで信頼できるのか?
偽りの記憶工場

第七章 無意識のうちに記憶する

無意識の記憶の起源
身に覚えのない記憶
潜在的な記憶を利用する方法

第八章 記憶と感情

記憶の「フラッシュ」
フラッシュバック
感情、肉体と理性
感情の回路と記憶の回路
感情的なトラウマ(精神的なショック)

第九章 記憶はどこへ行くのか?

記憶があやふやなるになる時
老人の記憶、何をすればよいのか?
●テスト13 注意力のテスト
老人の記憶と集団の記憶

はじめに

私たちは日常生活の中で、たとえば知り合いの名前や、少し前に夕食をとったレストランの名前、友人の住んでいる町名など、ちょっとした名前が「のど元まで出かけていても」なかなか思い出せないことがよくあります。
ところが、まるで記憶のファイルに近づくのを拒むかのように必死に思い出そうとしてもだめだった名前が、あるとき突然、心の中に浮かぶこともあります。
その名前はいったいどこから浮かび上がってきたのでしょうか?頭ではちゃんとわかっていることが思い出せないとき、私たちはイライラして欲求不満になり、頭が悪くなったのか、記憶力が弱くなったのかと疑いたくなります。
では、状況が逆の場合はどうでしょう?つまり、自分の記憶をうまくコントロールして、何でもすぐに思い出したり覚えたりすることができ、取るに足りないことは忘れることができたなら……。
このような問いかけは、さらに別の疑問を生み出すことになります。
たとえば、そもそも私たちはどうしてものを覚えるのか。
いくら忘れたいと思っても、なかなか忘れられない思い出があるのはどうしてなのか。
いやなでき事は早く忘れようと思っても、つい最近のでき事のように、いつまでも心の中に残っているのはなぜなのか。
誰もが、これと似たような疑問を持っています。
それに、若い人たちは学習能力を向上させたい、勉強したことをちゃんと覚えていたい、試験中によくある度忘れを何とか克服したいなどと願っています。
また、中高年の人たちは、いつも物忘れに悩んでいます。
彼らは多すぎる思い出に収集がつかず、それに押し流されるために役立つことだけを覚え、取るに足りないことは早く忘れたいと思っているのです。
結局、その年齢に関係なく、幸運に恵まれたごく少数の人を除いて、大部分の人たちは自分の記憶力が弱くなり、「昔のように」すぐ覚えることも、また、うまく思い出すこともできないと感じているのです。
ところが日常生活では、記憶の問題などまるでなかったかのように、靴ヒモやネクタイを上手に結んだり、バイクや車を操って街を自由に走り回ることができるのです。
でも、このような習慣的でほとんど無意識の動作や、バランスをとる動作、あるいは交通規則の通りに信号で停止したり、他車を優先させたり追い越したりする連続的な動作をするときにも、記憶は基本的な役割を果たしているのです。
では、これらは記憶ではないのでしょうか?みなさんが、もしこのような事実に疑いを抱いているのなら、つまり私たちが減退に悩んでいる記憶とは違った、別の種類の記憶があるのかと疑っているのなら、子供の頃に、はじめて自転車に乗ったときのこと、自動車の運転を覚えたときのことを思い出してください。その一連の動作はどれも、あなたの頭を悩ませたはずです。
たとえば、まずクラッチペダルを踏み、そのあとでイグニッションキーを
回し、ギアチェンジを入れればよいのか、考えるために集中力を必要としたはずです。
このような一連の動作をする場合の記憶は、一般に「手続き記憶」と呼ばれています。

(本文 はじめに より引用)

 
 


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