ゲームの名は誘拐
著者

東野圭吾/著

出版社
光文社
定価
本体価格 1600円+税
第一刷発行
2002/11
ISBN 4-334-92375-5
前代未聞の誘拐小説! 事件は犯人の側からのみ描かれる。果たして警察は動いているのか? 驚愕必至、充実の最新作!!

仕返しというふうに解釈しているんなら、それはちょっと心外だね。最初にいっただろ。これはゲームなんだ。おれはおたくの親父にゲームでの勝負を挑んでいる。どちらがゲームの達人かはっきりさせようということだ。(本文より)

 

結婚という言葉を出された瞬間、彼女に関心がなくなった。
大きな胸もすらりとした脚も、つるつるの肌も、マネキンの一部のようにしか見えなくなった。
おれは白けた表情を女に見せつけてからベッドを出た。
脱ぎ捨ててあったトランクスを穿き、鏡を見て髪の乱れを直した。
「何よ、その顔」上半身を起こし、彼女は長い髪をかき上げた。
「そんなに露骨に嫌な顔をすることないでしよ」
答える気もしなくなっていた。
目覚まし時計を見る。
午前八時五分前。
ちょうどいい時間だ。
五分後に鳴るはずだったアラームのスイッチを切った。
「あたしだって、もう二十七なんだから」女は尚もいった。
「そういうことを少しぐらい訊いたっていいんじゃない」
「結婚のことなんか、考えたことがないといったぜ」女に背を向けたままいった。
「あまり考えないといったのよ。全然考えないわけじゃない」
「そうですか」

(本文P.3より引用)

 

 
 


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