愛と永遠の青い空 They rest in peace
著者

辻仁成/著

出版社
幻冬舎
定価
本体価格 1400円+税
第一刷発行
2002/12
ISBN 4-344-00270-9
あなたにとって必要なのは思い出ですか?

 

真珠湾攻撃を経験したパイロット三人は、50年後のハワイに立った。彼らの前に現れたものは?。生命のたぎりを感じ男たちは、愛と生の復活を賭けあるプランを決行する。感動の書き下ろし長編。

青春の末期

人は永遠の愛などというものに憧れるが、果たして永遠という響きにいかほどの信愚性があるだろう。
最初から愛が永遠ならば、儚さを知ることもないし、悲しみも後悔も幸福
さえも意味をなくしてしまう。
それは素晴らしいことではあるが、同時に退屈で、想像力に欠け、緊張感のない日溜まりのよう。
愛は永遠ではないからこそ、輝いているとはいえないだろうか。
人生は有限であるからこそ、今を生きようと人々は切磋琢磨する。
青春も同じように、一時期のものだからこそ、青く輝く期間が眩しいのである。
青春には明らかに永遠がない。
そのことが青春を美しく尊く眩しくさせている。
人生の意味を深め、価値を生み出している。
古代の専制君主は、永遠という響きに心を奪われ、不老不死を追求し、スフィンクスや巨大墳墓を建てた。
その建築のために国家が疲弊し、滅びかけても、彼らは生まれ変わりや、永遠の命を手に入れることの方を優先させた。
永遠を求める力が、文明を西や東に拡大させたといっても過言ではない。
けれどもどこにも永遠はなかった。
どんなに偉大な国王であろうとも、永遠を手に入れることができた者はいない。
なぜなら永遠は心の中だけに存在するものだから。
一人歩きする永遠という言葉は、心の中にある純粋な永遠とは異なる。
永遠は手に入れるものではなく、許すことに似て、尊く、心の荒野に放し飼いにされたものであろう。
この物語の主人公は、永遠という言葉を懐疑しつづけた。
愛という言葉を容易には使わなかった。
実直に人生と向かい合い、本質を究めようとした。
彼が心にしまいつづけた愛の物語は彼が人生を最期まで投げ出さなかった記録でもある。
そして永遠の愛ではなく、
愛の永遠を求めつづけた証でもある。

(本文P.3,4)

 
 


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