渋井哲也/著
ある人は『パフォーマー』と言い、ある人は『真の改革者』と評す。 政治のあり方を考える必読書。
はじめに
「乾杯!」 九月一日午後八時過ぎ。 地元テレビ局のニュース速報が「当選確実」を伝えた。 田中康夫は再び長野県知事選の勝利を味わった。 東筑摩郡朝日村の村営多目的施設に集まった約一五〇人の支持者から、大きな拍手が鳴り響く。 「おめでとう!」 「お疲れさま!」 と、声が飛びかう。 グレーのスーツに身を包んだ田中は、煎茶で乾杯をした。 その煎茶は、失職後に初めてミニ集会を開いた、下伊那郡天龍村で採れたものだった。 この場所を選んだのには理由があった。 当初は松本市内の事務所で開票を待つはずだったが、支持者と屋外で結果を待ちたいと田中康夫は思い、急遽スタッフが探した。 そして、長野県出身の小説家・島崎藤村の作品にちなみ、と意味づけた。 「『夜明け前』から朝日が昇るイメージ」 当確を耳にした支持者たちに、田中は握手攻めにあっていた。
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