ナイト 脱げなかった鎧の秘密
著者

ロバート・フィッシャー/著 松浦健一/訳

出版社
アスペクト
定価
本体価格 952円+税
第一刷発行
2002/10
ISBN4-7572-0935-5
家庭を大事にしている男ほど家族を愛していない

王国一の勇者をめざしくいくさに明け暮れるナイトの自慢は光輝く鎧だった。やがて彼はいくさのないときでさえ鎧を脱がなくなり、妻や子供はナイトの素顔を思い出せなくなる始末。そんな生活に嫌気がさした妻は、子供をつれて家を出ようとする。こまったナイトは渋々と鎧を脱ごうとするが、どうしたことか鎧が脱げない。いろいろ試したけれど万策尽きてしまったナイトは、ついに鎧を脱ぐ方法を求めて賢者を訪ねる旅に出る。

ある王国にひとりのナイトがいた。
はるか昔のことだ。
ナイトは、自分が善良で、心優しく、困っている人を放っておけない情け深い人間だと信じていた。
勇気ある騎士がすべきことは何でもやった。
卑劣な敵と戦い、美しい乙女がドラゴンにとらわれていれば命がけで救い出した。
ただ、いくさがないときに、助けを求めてない乙女までも救ってしまうという迷惑な癖も持ち合わせていて、多くの乙女から感謝される一方で、機嫌を損ねたりもしていた。
ナイトの何よりの自慢は彼の鎧だった。
磨き込まれた鎧は光が当たると太陽のようにまぶしく、彼が馬にまたがっ
ていくさに出かけるたびに、村人は「きのう太陽が北から昇った」だとか「いやいや、さっき東に沈んだ」などと口々に噂した。
ナイトはそれはもう、ひんぱんに出征した。
「遠征」と聞いただけで、いそいそと鎧を身に着けてどこへでも出かけていった。
勢いあまって城を出たのはいいが、行く先がわからないで立ち往生することもたびたびだった。
ともかくナイトは長年にわたって王国一の騎士たらんと努力に努力を重ねていたのだ。

 
 


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