新海　誠

話題のプライベートアニメの傑作「ほしのこえ」。オリジナル版に一部修正カットを加えた完全版映像収録のＤＶＤ付。未発表の秘蔵絵コンテも収録。

吉祥寺のアニメワンダーランド2002にて講演会。サイン本限定３０冊入手。

「ほしのこえ」ムーブメントヒストリー

「ほしのこえ」の名前が最初にユーザー同士で唱かれたのはインターネットの掲示板でだった。
その喘々しい感性と圧倒的なクオリティは、予告編に触れた人を次々と魅了していったのだ。
このDVDB00Kに収められた作品、「ほしのこえ」は、2000年に開催された第12回DoGACGアニメコンテストでグランプリを受賞した短編CGアニメ
ーション作品「彼女と彼女の猫」の作者新海誠監督の最新作である。
「ほしのこえ」は本編発表前に、幾つかの予告編力溌表され、Webや各種イベントで公開されている。
当時からそのクオリティの高さは話題となっていた。
私が「ほしのこえ」と出会ったのは2001年10月頃。
Webでダウンロードした予告編の映像を見て息を飲んだ。
音楽と映像の美しい融合、今まで見た事のない繊細な映像表現に驚嘆した。
「ほしのこえ」はネット上でも大きな話題となっていた。
ネットの掲示板を見て回ると、期待に胸膨らます人々が作品の完成を待ちわびていた。
2002年2月2日、東京下北沢にある短編映画専門映画館トリウッドで「ほしのこえ」はついに封切られた。
公開初日、トリウッドには、早朝から長蛇の列が伸びていた。
(近隣の商店街から苦情が出る程だったらしい)
用意されたチケットは全て完売の満員御礼。
急遽追加で準備された上映回も即時完売。
熱気に包まれた封切となった。
この様子は、インターネットの様々なWebサイトで取り上げられた。
人気の個人ニュースサイトでは、当日の様子をデジタルカメラで撮影して独自の報道が行われるなど、見た人がネット上で報告する事で、「ほしのこえ」の評判は瞬く間にネットを駆け巡った。
こうして話題が話題を呼び、上映期間の約1ヶ月でトリウッド最多動員記録を塗り替え約3,500人もの来場者を記録した。
2002年4月19日「ほしのこえ」DVD発売。同日トリウッドで開催された発売記念イベントでは新海監督と萩原プロデューサーのトークイベントが行われた。
「DVD初期生産分約10,000本は、完売確実です。」
萩原氏より驚きの発表があった。
会場はどよめき、次の瞬間、拍手と歓声が上がった。
一般的に5,000本売れれば成功と言われるアニメDVDの中で初回で10,000本を完売。
その後も順調に出荷本数を伸ばし、2002年7月現在では、25,000本の出荷を言瞬している。
「ほしのこえ」はWeb以外の雑誌やTVなど他メディァには、広告を出していない。
それなのに、これだけ大きな結果を出せるとは、ネットの影響力の凄さを見せ付けられた出来事だった。
その後、「ほしのこえ」は様々なメディアに注目され、『広告批評』など一般誌でも特集が組まれた。
アニメ専門誌では、評論家・大塚英志氏による「ほしのこえ論」の掲載⊃『月刊アニメージュ』の巻頭特集をはじめとする各アニメ誌への掲載。
あの「機動戦士ガンダム」の富野由悠季監督との対談など、新人作家に異例の扱いが続く。
TVでは、北海道文化放送、テレビ西日本にて本編TV放送が行われた。
更に、NHKのニュース番組では10分弱の特集が組まれるなど注目が集まった。
これらは、2月のトリウッド初上映から、たった半年間の出来事である。

（本文Ｐ.10、11より引用）