業界地図が一目でわかる本
著者

ビジネスリサーチ・ジャパン

出版社
三笠書房
定価
本体価格 533円+税
第一刷発行
2002/05/10
ISBN4-8379-7246-2
新聞、テレビよりわかりやすい日本経済まるわかり

80%の企業が何かの業務提携をしている現在、かつてのライバル会社と提携する企業も続々。明解な図解データで、激動する88業種の「新・勢力図」が一目瞭然。新聞やテレビよりもはるかに日本経済がまるわかりの1冊。

■目次
1 21世紀注目の業界―「激変の勢力図」に未来日本を読む;2 金融関連業界―今後、金はどこに集まり、どう流れるのか?;3 製造・建設関連業界―「技術力」で復活なるか、日本産業の命運;4 エネルギー・食品関連業界―消費者の意識に、どこまでついていくか?;5 流通・運輸関連業界―勝ち組・負け組、大逆転の目はあるか?;6 マスコミ・情報・レジャー関連業界―「変わる日本人」が業界地図を塗り替える!

はじめに

生き残りをかけた企業戦略

ビジネスマン必読の書

凄まじいスピードで、市場が業界が、そして個々の企業が変化している。
二度にわたるオイルショックや一九八五年の「プラザ合意」以後の円高によっても日本経済や企業は変化を余儀なくされたが、今日の変化はその比ではない。
すでに経営の第一線から離れている、あるいは離れようとしている、戦中・戦後の混乱期を社会人として実体験した人を除いては、初めて経験する事態である。
変化というよりは大変革、革命といってもあながちオーバーではない。
当事者や関係者にとっては残念至極のことだろう、たった四文字の「経営破綻」で消え去る企業が後を絶たない。
経営資源を本業に集中するために将来性の乏しい事業から撤退する企業も多い。
実質的には会社切り離しである持ち株会社への移行も活発化している。
公正取引委員会は二〇〇二年二月に興味ある発表をしている。
「業務提携と企業間競争に関する実態調査報告書について」と題するものである。
上場企業を中心に急増しているといわれている「業務提携」の実態を探ったものだ。
それによれば、何らかの業務提携を実施している企業は八○%に達している。
驚くなかれ五社に四社はすでに業務提携をしていて、それも一社平均の提携は一五・四件にのぼるという。

その多くが戦略的提携、事業全般にわたる包括提携であるという事実は重く、今日までライバルとして戦っていた会社との提携も目立つ。
経営破綻はいうまでもなく、事業の撤退や持ち株会社への移行、そして他社との提携は、現在勤務している会社が、就職を希望する会社が、明日にはなくなったり別の会社になっている可能性があることを意味する。
業界の構図がまったく一新することもあり得るわけだ。

実際に取材で企業に足を向けていると、そのあまりの変化に驚かされる。
半年前に合併して新しく設立された事業部ではすでに次の合併に備えて動き出している、一週間前には課員が忙しそうに動き回っていた事業部がまるごと他社に売却されたためにぽっかりとそのスペースが空いている、といったことは珍しくなくなった。
企業が変われば、当然のようにそこで働くビジネスマンも変わる。
入社一、二年生でもなければ、何年も同じ肩書き、所属先の名刺という人はまずいない。
取材するたびごとに新しい名刺を手渡されるために何枚もたまり、いざ連絡をつけようとするとどれが現在のものか混乱してしまう人も一人や二人ではない。
二十年以上もある企業の経営トップとして活躍していた人が、ライバル企業のトップに就いていたりもする。
もちろん、企業の変化・変革はある種の痛みを伴うものである。
たとえば、マスコミ報道では「合併・統合」と一言で片付けるが、その現場ではドロドロとした極めて人間くさい確執が続いたりする。
九〇年代初頭に合併し、今度はさらに別のところと統合されることになったある金融機関など、一〇年余も机を並べながら、「○○銀行出身者」と「××銀行出身者」の間に横たわっていた壁はついに取り払われることはなかった。
マーケットの変化や事業転換、親会社の変更がビジネスマンにもたらす影響もはかりしれない。
某大手流通がコンビニ部門を設立したときである。
コンビニ部門に回された社員の多くは、当初、メインの百貨店・スーパーマーケット事業から離れたことでその将来

を悲観した。
しかし、しばらくすると盲貨店・スーパー部門とコンビニ部門の業績が逆転。
給与などにも反映されたことから、いつしか会社の主流派気分に浸った。
それが現在、親会社から切り離されて別資本の傘下に入った。
「また再び、一からやり直しか」
取材関係者の一言が、今も耳に残る。

「バブル経済崩壊後の失われた一〇年……」といった枕詞が必ずといっていいほど使われ、世問は悲観論一色である。
中には日本衰退論を唱える経済アナリストもいるし、その裏返しとして「中国脅威論」も盛んに叫ばれるようになってきた。
しかし、今日の大変化は、日本の企業が、そしてビジネスマンが生き残りを賭けて、へ〜という厳しい時代に立ち向かっていると捉えたいし、そう信じたい。厳しい時代にも確実に技術革新を進展させ、マーケットの変化に備えている企業やビジネスマンは存在するし、そうした企業やビジネスマンは時期がくれば信じられないほどの大変身を遂げている一そんな思いと期待を込めながら、本書を作成した。
本書では、複雑に見える業界の動向や企業の動きをできるだけ一目で理解し、俯瞰できるように図版を多用している。
今後の日本経済、とくに業界や企業動向に関心を持つ方々の参考になれば幸いである。
切れ味を誇る刀も手入れを怠れば鈍刀になってしまうように、漫然と過ごしていれば、いつしか能力も錆びついてこよう。
「今日の現実」を値視することなしに、「明日の姿」は見えてこない。
業界や企業の動きに敏感になりたいものである。

(本文 はじめに より引用)

 
 

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