トヨタはいかにして『最強の社員』をつくったか
著者
片山修
出版社
祥伝社
定価
本体価格 1600円+税
第一刷発行
2002/04/20
ISBN4−396−61144−7
サラリーマンの新しい『働き方』とは!?

サラリーマンの新しい「働き方」とは !?
初めて明かされる"トヨタの人材開発法"

「最強の社員」をつくる"トヨタ・人事の方式"
●バブルのまっただ中でも「危機感」を持つ
●改革は「亀の歩み」でいい ── 徹底して「段取り」を重んじる
●「人を切らずに働き方を変えて」利益を上げさせる
●「自己変革を促し組織を活性化させる」のが、人事改革の成功のカギ
●改革の推進力は「ビジョンの共有化」
●「一対一の対話」が合意を形成する
●「多様な社内団体」が改革をサポートする …… etc

知られざるトヨタの「人材開発法」とは?
序 章 「積み上げた10年」が今のトヨタの強さをつくった
第1章 どうやってホワイトカラーの生産性を上げるか
第2章 「社員の意欲低下」なき賃金制度改革
第3章 モノづくりを支える技能員4万人の意識改革
第4章 いかにして20代・30代の若手社員を「プロ」に育てるか
第5章 トヨタを動かしてきた「危機感」
第6章 トヨタ生産システムの人材開発への応用
第7章 10年にわたる亀の人事改革
第8章 人事部はなぜ本音をキャッチできるのか
終 章 人のグローバル化がこれからの戦略課題

 

 

 

まえがき

トヨタ自動車は、いまや日本最強の企業である。
二〇〇二年三月期の連結経常利益は一兆円を突破することは間違いない。
むろん、日本の企業では初めてだ。
トヨタは、六万五〇〇〇人の巨大組織で、金太郎飴集団といわれている。
にもかかわらず、トヨタの経営はスピーディーかつ柔軟だ。
二〇〇二年からF1に参戦するなど、チャレンジスピリッツも持ち合わせている。
ましてや、世界に先駆けて】九九七年にハイブリッドカー「プリウス」を市販し、二〇〇三年には圧縮水素型「燃料電池車」の限定販売を計画するなど、環境対応でも世界をリードしている。
日本の大企業が軒並み業績を悪化させているなかで、なぜ、トヨタだけが最強であり続けられるのか。
トヨタには、まるで、てシックボックスが存在するかのようだ。白いハソカチーフが赤いハンカチーフに変わったり、ハソカチーフが卵や鳩に変わってしまうように、トヨタ内部には、われわれを驚かせる仕掛けがある。
その仕掛けの秘密については、これまでセルシオ、カローラ、プリウス、ヴィッツなどヒット車の側面、世界に冠たるトヨタ生産システムの側面、あるいはトヨタ自動車会長の奥田碩氏に象徴される経営トップのリーダーシップの側面などから解明されてきた。
私はそうではなく、セルシオやカローラやプリウスなどをつくっている「人」そのものの側面から、トヨタの解剖を試みようと思った。
トヨタがこれほどまでに強いのは、企業にとって最大の経営資源である「人」そのものに理由があると考えたからである。
ましてやトヨタは、日本が「失われた一〇年」を過ごした九〇年代に、一〇年にわたって組織・人事改革を積み重ねてきたのだ。
トヨタは九〇年代において、組織のフラット化を進め、ポストを減らした。昇格に能力主義を取り入れ、昇給に成果主義を反映させた。
企業が紐織や制度を変える以上、従業員も働き方や価値観、行動パターソ、ライフスタイルを変えざるを得ない。
そこには痛みが伴う。できれば変えずに、このまま逃げ切りたいと考える人もいるだろうし、すでに手にしているポストを手放したくないと考える人がいて不思議ではない。
だが、トヨタは抵抗勢力や既得権者にひるむこともなく、邪魔されることもなく、経営革新を推進し、強くて柔軟な経営体質への転換を図ることに成功した。
トヨタが、モチベーショソの低下を招くことなく、経営革新を断行できたのは、従業員と企業の関係の大転換を図ったからだ。
また、両者が、共通のビジョンのもとに行動を起こしたのも、その仕掛けが働いていたからにほかならない。
そのうえ、組織・人事改革を単なる制度改革に終わらせることなく、従業員の意識改革へと深化させることができたのも、それらの仕掛けが作用したからだし、従業員一人ひとりの自己改革を誘発し、能動的な改革へと導くことができたのも、同じ理由からである。
トヨタは、従業員と企業との新たな関係というマジックをもって、「構造改革」に成功したのである。
つまり、戦後の繁栄をもたらした日本型経営そのものを解体し、まったく新しい経営のフレームワークを構築した。
そのフレームワークを構成するのは、組織の論理から脱却し、自発的なモチベーショソによって働く、自立した個人だ。
いってみれば、
「最強の杜員」である。
トヨタは、「最強の杜員」をキーワードに、旧来の日本型経営から脱却し、「新日本型経営」を構築したといえる。
それは、二十世紀に強さを発揮した日本型経営にも増して、世界をリードする経営システムになっていくに違いない。

二〇〇二年四月

片山修

本文 まえがき より引用

 

 

 

 

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