爆笑問題の日本原論、世界激動編
著者
爆笑問題
出版社
幻冬舎
定価
本体価格 1000円+税
第一刷発行
2002/05/10
ISBN4−344−00183−4
戦争 笑える!?

9月11日のあのテロが起きた瞬間は、世界中のコメディアンが口をつぐんだ瞬間でもあるのだ。こうしてあのテロは、”世界一笑えない事件”となった…「あとがき」より 戦争、笑える?!3年ぶり!太田光執筆のオリジナル日本原論。

 

ごあいさつ

二十一世紀は始まった。
誰もが、子どもの頃に思い描いた二十一世紀とは、何でもかなう夢の未来だった。
科学技術と人間の知恵が格段に進歩して、不可能なことが可能になる世界だった。
そして二十一世紀。
実際に人間は、二つの飛行機で二つの超高層ビルに、それぞれ正確に体当たりできることを証明した。
夢の二十一世紀は、不可能がなくなったことを知らせる二つの派手な爆音とともに始まった。
ドカーン!
ドカーン!
双子の飛行機が、双子のビルに突っ込んだその瞬間、我々は自分のまわりを取り囲んでいるのが無数の双子だらけだということに突然気がついた。
そして我々にはその双子の見分けがまったくつかないということにも。
我々は、“イスラエル”と“パレスチナ”の見分けがつかなかった。
“ユダヤ教”と“イスラム教”の見分けもつかなかった。
また、“キリスト教”と“イスラム教”の見分けさえもつかなかった!
“タリバン”と”“北部同盟”は、瓜二つの双子にしか見えなかった。
アメリカでは、ヒゲを生やしていた無関係な男が、テロリストの仲間とされて、殺された。
人間のDNAのほとんどが解読されたというニュースの流れた二十一世紀初頭、我々が人を見分ける唯一の手がかりとしたのは、“ヒゲを生やしてるか、生やしてないか”
だった。
アメリカは、これはテロではない、戦争だと言った。我々はまた頭を抱えた。
“テロ”と“戦争”の見分けがつかなかったのだ。
しかも我々は“自衛隊”と“軍隊”の見分けすらつかなかった。
そして、“報復”と“平和”の見分けもつかなかった。
我々がそんなことで悩んでいるうちに、アメリカは空爆を始めた。
再び派手な爆音が鳴り響いた。
ドカ─ン!
ドカーン!
そのうち、タリバンから解放された人々が、嬉々としてヒゲを剃っている映像が世界中に流されると我々は安心してこう思った。
「やっぱり違いはヒゲだったんだ」
そして我々は、彼らにこう言ってあげたくなった。
「もう一度、“ブラウン”で剃ってごらん。まだヒゲはたくさん残っているハズだよ」
同じ頃、日本にいる我々は、“和牛”と“オーストラリア牛”の見分げがつかなくて、困っていた。
グルメ大国と言われた国の我々は、ラベルを替えられてしまったら、何も見分けることができないという事実に呆然とした。
“安全な食品”と“危険な食品”
“貧困”と“飽食”
“貯金”と“借金”
“進歩”と“崩壊”
それらの双子は、瓜二つの顔をして我々のまわりを取り囲み、我々は何ひとつ見分けられずにいる。
本文 ごあいさつから引用

 

 

 

 

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