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癇癪持ちなカルメン、美人のレーナ、反抗 屋のティビー、運動神経抜群のブリジットという、ワシントンに住む４人の女子高生は生まれたときからの友だちどうし。母親たちが妊婦教室で知り合ったのがきっかけなので、生まれる前からのつきあいといってもいいかもしれない。本人たちの性格や趣味はもちろん、家庭環境や通う学校も違うが、４人は週末や長期休暇は必ずいっしょに過ごしてきた。
ところが今年の夏休みは、生まれてはじめて、４人がまっ
たくばらばらに過ごすことになる。夏休み前夜、集まった４人は、カルメンが古着屋で買ってきた１本のジーパンを面白半分に着まわしてみる。４人それぞれにぴったりフィットすることがわかる。しかもそれぞれにとても似合うのだ。体つきがまったく異なるのに、みんなフィットするというのは魔法のジーンズにちがいない、ということになり、４人はそのジーンズを夏休みのあいだかわりばんこに手元におくことにする。彼らはジーンズの使用規則を作り、最長１週間で次の人に送ること、そして互いの生活についてこまめに報告しあうことを約束する。・・・・・・
（理論社ＨＰから引用）
プロローグ
「放浪するもの、すべて迷い子ではない」Ｊ・Ｒ・Ｒ・トールキン
これは一本のパンツのお話。
そのパンツとは、特別な力を持つブルージーンズだ。
ブルーといっても、入学式でよく見かけるような濃いブルーじゃない。
もっとやわらかな色、光のかげんでちがって見える色だ。
ひざとお尻のところがすこし色あせて、すそはすり切
れて白くなっている。
いままでの持ち主にとても大事にされていたんだ、見ただけでそう思った。
古着屋の古着って、なんとなく野犬収容所の犬と似ているような気がする。
つまり、もとの持ち主しだい、ってところが。
わたしたちのジーンズは、いつも留守番ばかりさせられて、朝から晩までほえてた神経質な子犬という感じじゃなく、飼い主にとても愛されて育った、おとなの犬という感じだった。
飼い主がマンションにひっこすことになったかなにかで、どうしても手放さなくてはならなくなった、そんな印象だった。
そのジーンズは、悲しい過去を背負ってわたしたちのところへきたわけじゃない。
世の中はどんどん変わってゆくという、すこしつらいけどあたりまえのことを見てきただけ。
それが、ジーンズの宿命なのだ。
ジーンズは、上等だけど、きどった感じのするものじゃない。
店で見かけても、ただのジーンズとしか思わない人もいれば、その美しい色あいや縫い目に、足をとめて見とれる人もいるだろう。
かといってジーンズは、べつに見とれてほしがっているわけではない。
ただ、はいてくれる人のお尻を、じっさいよりほんのちょっと小さく見せるという、ジーンズとしてのつとめをはたせば、それで幸せなのだ。
ジーンズを買ったのは、ジョージタウンのはずれの、お水を売っている店と健康食品を売っている〈イエス！〉という店のあいだにはさまれた古着屋だった（〈イエス！〉のことを話すとき、いつもわたしたちは「イエス！」とおもいっきり声をはりあげていう）。
その日わたしは、レーナと、彼女のおかあさんと妹のエフィといっしょに買い物にでかけていた。
エフィのプロムパーティのドレスをえらぶためだった。
エフィはふつうの子とちょっとちがって、高級デパートに売っているような、肩ひものついた真っ赤なドレスを着たがる子じゃない。
お目当ては、ヴィンテージものの古着だった。
そもそもわたしがジーンズを買ったのは、レーナのおかあさんが古着屋を嫌ったからだ
った。古着はまずしい人たちが着るものと思っていたおばさんは、「それ、あまりきれいじゃないわ」と、エフィがハンガーから服をとるたびにいった。
わたしもひそかにおばさんに賛成だったけど、それが無性にはずかしく思えてきた。
ほんとうは新品の服のほうが好きだけど、意地でもなにか買っちゃおうという気持ちになった。
ジーンズはレジの横の棚に置かれていた。
きれいにたたまれて、洗濯もされていたし、税こみでたったの三ドル四十九セントだった。
試着もしないで買ったのだから、ほんとうにはきたかったわけではない。
わたしのお尻にぴったりのジーンズなんか、そう簡単に見つからないのだし。
本文Ｐ.５〜７より引用
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トラベリング パンツ
