E.T.
著者
テリー・コリンズ
出版社
ソニー・マガジンズ
定価
本体価格 1200円+税
第一刷発行
2002/03/16
ISBN4−7897−1833−6
世界でいちばん 愛されている物語

世界中の人々に愛された映画のジュニア版ノベライズ。

エリオットが裏庭で見つけた不思議な生物、それは宇宙船に乗り遅れ、立った一人地球に残されてしまった宇宙人E.T.だった。ふたりは次第に友情で結ばれ、E.T.を故郷の星へかえす準備が始まった。一方謎の追っ手がE.Tたちにせまっていた…。孤独な少年とE.T.の友情の冒険を描くファンタジー。

 

 

1
迷子の乗組員

夜がやってきた。
暗くなった森の上に、ひとつまたひとつと星が顔をのぞかせ、またたきはじめた。
ところが、その夜、またたきのひとつが動きだし、すうっと森のなかに消えた。
その光は地面におりたときも、なんの物音もさせなかった。
木々のあいまにおりたものは、宇宙船だった。
さほど大きくないし、ひとむかし前の宇宙ロケットのような尾翼も噴射口もついていない。
まるで無数のホタルが集まってできた熱気球のようだ。
円形のハッチがひらき、ピンク色の明かりがこぼれだした。
タラップがおりてきて、そこから奇妙な姿をした牛き物たちがよたよたと出てきた。
背は小さな子どもくらいで、皮ばかりのひょろ長い腕をしている。
胸には、赤い光がぼうっとともっていた。
どうやら、彼らはテレパシーで気持ちを伝えあっているらしい。
船外に出た宇宙人たちはまわりの美しい風景を見て、小さな歓声をあげた。
小型のスコップや棒きれやバケツを取りだし、宇宙船に持ちかえるために、植物や土を採取しはじめる。
これで、長かった地球での任務もやっとおしまいだ。
宇宙人のひとりが、光またたく宇宙船と仲間たちからはなれて歩きだした。
別の種類の植物を求め、森の奥へはいっていく。巨大なアカスギの木々にかこまれると、その姿はますます小さく見えた。
草花を踏みつけないように、下を見ながら歩いていく。
ときどき、長い指で地面を堀って植物をひきぬき、根元の土をはらい落とした。
ウサギがこの見慣れない生き物に気づいてふり向いたが、こわがるようすもない。
静かだった。聞こえてくるのは、コオロギの鳴き声とそばを流れる水の音、そして、その宇宙人のやわらかな息づかいだけ。
いきなり、トラックが一台、ヘッドライトをぎらぎらさせ、うなりをあげながら宇宙人のそばに出現した。
彼はその場にこおりついた。
すぐさま胸の赤い光が点滅し、危険をつげる。
宇宙船のそばにいる仲間たちの胸からも、赤い警戒信号が出されている。
アカスギの木立にはたくさんのトラックが乗りいれ、宇宙人が母船へもどる
道をふさいだ。
エンジン音をとどろかせ、ヘッドライトをまぶしく光らせたトラックから、男たちが次々とおりてきて、懐中電灯を片手になにかを探しはじめる。
先頭に立っているのは、たくさんのカギがついたキーホルダーを腰のベルトにぶらさげた男で、ほかの者に進めと合図した。
見つからないように宇宙船にひき返そうと、宇宙人は走りだした。

本文P.5〜7より引用

 

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