愛がなくてははじまらない。
著者
唯川恵
出版社
大和書房
定価
本体価格 1200円+税
第一刷発行
2002/03/15
ISBN4−479−68140−X
直木賞受賞第I一作! 「あなたさえそばにいてくれたらあとは何もいらない。だからお願い、私を好きになって。」

「あなたさえそばにいてくれたら、あとは何もいらない。
 だからお願い、私を好きになって。」

恋をすると、楽しいことも苦しいことも2倍になる。
新・直木賞作家が綴る愛についての24章。
恋するチカラをもらえるエッセイ集。

 

大和書房 唯川恵 連載エッセイ集

 

恋をするなら

生涯、恋はたった一度でいい、という思いがないわけじゃない。
死ぬほど好きな男なんてそうそう現われるものじゃたい、という思いもある。
だけども、やっぱりそうじゃなかった。
今まで生きてきて、恋と呼べるものを何度もしてしまった。
そして思ったのは、「結局、恋たんか何回もすればいいのよね」ということだった。
そう言うと、恋をすることはつきあうこと、と考えてしまう人もいるかもしれたいけれど、それは違う。
つきあって、ベッドに何回入っても、恋とは違うことをしている場合がある。
恋に似てるけど、たぶん、恋からいちばん遠いこと。

それは何?と聞かれたら、こう言おう。
ヒマつぶし。
言葉が悪いです。
それはわかってます。
でも、いろいろ考えてそれに行き着いた。
ひとりが耐えられない。
週末の予定が白紙なのは退屈。彼がいたいのは恥ずかしい。
いちゃいちゃしたい。
また、それを誰かに見せつけたい。
私もそうだったたあ。特に若い頃は。
仕事とか趣味とか友情とか、大切たものはたくさんあった。
その順位はその時々に入れ替わり、ある時は仕事に没頭したし、ある時は趣味に打ち込んだし、ある時は友人たちとのつきあいが楽しくてしょうがなかった。
でも、ナソバー1はいつもあいていた。
そこはいつだって恋の席だからだ。
その席を埋めるがために、とにかく誰かを見つけて来る、といった具合だった。
ま、実は今もそういうところがないとは言えたいのだけれど、そのナンバー1の席が長くあいていてもあまり気にたらなくなった。
私も少しは大人になったのでしょうか。
さて、恋は、しようと思ってできるものではたいけれど、もしできるとしたら、うんと年上の男と、うんと年下の男、というのを経験してみたい。
うんと、と言っても、みなさんの年齢もあるだろうし、もしあなたが二十歳そこそこだとしたらまさか十歳下の男の子とはつきあえないわけで、そこはある程度、感覚で判断してください。
私にとって、うんと年上の男といって思い出すのは、十九歳の時に出会ったカウンターバーのマスターだ。
私より一回りちょっと上だった。
今思えば、なあんだまだ三十二、三歳だったんじゃな
い、と思うけれど、あの頃の私にとってはとてつもたく大人に見えた。
マスターには全然相手にされたかった。
というより、子供扱いされていた。それは決して十九歳を子供扱いしていたのではたくて、そのマスターは、私とほぼ同年代の女の子とつきあっていた。
でも、私はそんな対象ではなかった。
何とたく気持ちを伝えたこともあったが、
「君にはもっとふさわしい男がいるよ」

 

 

 

 

 

このページの画像、本文からの引用は出版社、または、著者のご了解を得ています。

Copyright (C) 2001 books ruhe. All rights reserved. 無断でコピー、転写、リンク等、一切をお断りします。