鳥頭紀行 くりくり編
著者
西原理恵子 ゲッツ板谷 鴨志田穣
出版社
角川書店
定価
本体価格 1100円+税
第一刷発行
2001/11/1
ISBN4−04−883712−5
もう、私たちは人ではない・・・・。 ご存じサイバラりえぞうが、ゲッツ、カモちゃんを引き連れ、ミャンマーで出家し、九州でタコを釣り、ドイツでハネムーンに飛ぶ!悟りを開いたりえぞうが、人生相談もしてくれて・・・・。内容てんこ盛り!オールカラーでお届け! おまけシール&携帯ストラップのプレゼント付き。

■目次 どこへ行っても三歩で忘れる鳥頭紀行―ミャンマー出家編;どこへ行っても三歩で忘れる鳥頭紀行―九州タコ釣り編;どこへ行っても三歩で忘れる鳥頭紀行―ドイツハネムーン編;西原理恵子の大爆笑マンガ;西原理恵子の何がでてくるかわからない;西原理恵子のさぶライフwith人生相談

■要旨 ご存知サイバラりえぞうが、ゲッツ、カモちゃんを引き連れ、ミャンマーで出家し、九州でタコを釣り、ドイツへハネムーンに飛ぶ!悟りを開いたりえぞうが、人生相談もしてくれて…。内容てんこ盛り!オールカラーでお届け。

 

 

たった2つのキーワード
わかるかっ、そんなもん!!

最悪である……。

先日、サイバラから電話があり「あんたもチームに入ったから」と言っただけで、切れた。
その2時間後、今度はカモちゃんから電話が入り「ミャンマーに行くからビザを取っておくように」との一言で切れた。

チームに入ってミャンマー!?
去年の夏、うちのジイさんが「恐竜大行進……」と言った4時間後、病院のベッドで死んだが、それと同じくらい訳がわからない。
ま、わからんついでに、とにかくオレは今ミャンマー行きの飛行機の中にいる。

そして、真ん前の席のイルカと落武者を力ずくでミックスさせたような顔のオヤジ、この中国人らしき男は、離陸して10分もたたないうちに立ち上がり、通路でヤジロベエのように左右に揺れながらその場歩行を続けている。

のっけから嫌な旅である。
が、さらに隣りに座っているサイバラが…。
「アンタ、この2週間で確実に10キロは落ちるな、体重が」

「……して、そのココロは?」
「秘密」
「………」
田舎の女子高生風に言わせてもらおう。

バラっち、アンタ変わった……。
昔のバラっちじゃない。
昔のバラっちは死にそうな捨てネコにエサをあげたり、美大に合格した時に掲示板の前でワンワン泣いたり…っていう、親切で優しくて正直な人だったよ。

ワタシが病気の時なんか大きなポンカンを3つも抱えてきてくれて、小鳥はなぜ歌うのかってことを話してくれたり…って、もう止めとけ、オレ。
潰す気かっ、このページを。


デブの国際的な人身売買つまり、それなのか……!?

数時間後、飛行機はミャンマーの首都ヤンゴンにある空港に到着した。
入国手続きを済ませ、サイバラ、担当編集のハセピョンと共に空港の外に出る。

モワ〜ッとしたフリオ・イグレシアスの吐息のような空気。
エビばかり食う親戚のガキのゲロを無理矢理コパトーンで消臭したような、南国特有のニオイ。

気温は家を出発した時の10度から、一気に35度にまでハネ上がっていた。
「お〜いっ、ここだよ、ココ!!」

金髪にドウボーイのTシャツという、農作業はよく手伝うが、時々万引きをする少年のような出で立ちのカモちゃんが立っていた。
彼は、一度飛行機に乗り遅れるという香ばしいチョンボをしながらも、オレ達に先行して5日前からヤンゴンに入っていたらしい。

市内のホテルにチェックイン後、スグに晩飯を食いに行った。
ミャンマー料理というのは一言でいえばイコール、カレー料理らしく、注支した料理のほとんどもラードがギトギトに浮いたカレー味。

が、意外にもそれは美味しく、特に鶏肉は日本のとは違い、口の中で大和田獲と岡江久美子のオシドリ夫婦が堅実に残りの人生を消化しているような、そんなシッカリとした昧がした。
ま、そんなことはどうでもいい。
問題なのは、これから一体何がおっ始まろうとしているのか……だ。

その後、ホテルの部屋に戻るとスグにカモちゃんがやってきて、ヒゲを剃れとオレに指示。
その上、抱えていた風呂敷包みの中から、ゴムサンダル、白いワイシャツ、スカートまがいのモノを出し、それらを明日の朝から身につけろと言う。

「なあ…………ミャンマーのホモか何かにオレのことを売りつけようとしてんのか!?」
「俺も同じ事をするんだから黙って言った通りにしろ!これは命令だっ!!」

人間って悔しくて悲しいのにどうにもならない夜って、無意識のうちに田中角栄のモノマネをやってたりするもんなんだよなあ。
フカシだと思うならオレと立場代わってみ。
ホントだから……。

翌朝。
ノッコ抜きでステージに押し出されたレベッカのような気分で指令通りの格好になり、ホテルの玄関口から皆と怪しいワゴン車に乗り込むオレ。
「これからはタバコや酒はもちろん、蚊を叩いてもいけないし、午前10時から翌朝の5時半までは何も食べちゃダメだし、私語も禁止。これは特に板谷君に言っとくけど、オナニーも厳禁だからね!」

「ねえ、カモちゃん。アンタ、何を言ってんだよっ。何を言ってるんだあああ!!」自分でもビックリするような大声を出していた。
「大丈夫だよ。最低でも1日4時間は寝られると思うから」15分後、得体の知れない施設の門をくぐるワゴン車。……なあ、情けねえけどオレって震え始めてんですけど、狂牛病の牛みたいに。

 

 

 

 

このページの画像、本文からの引用は出版社、または、著者のご了解を得ています。

Copyright (C) 2001 books ruhe. All rights reserved. 無断でコピー、転写、リンク等、一切をお断りします。