ハリー・ポッタを探しにイギリスへ
著者
林雪絵
出版社
OH!文庫/新潮社
定価
本体価格 581円+税
第一刷発行
2001/12/10
ISBN4−10−290131−0
「魔法の国」は、それを信じる人の心の中にある。9月1日午前11時。八リー・ポッターに出会うため、キングズ・クロス駅発の特急列車に筆者は飛び乗った

■目次 第1章 ハリー・ポッター探しのロンドン(ヒースロー空港で英国のバットマンに出会う;エンジェルのアンティーク市で魔法の道具を探す;ロンドンのオタクの祭典に行く;ロンドン一人でぶらぶら歩き);第2章 魔法使いや幽霊たちの楽園、エジンバラ(キングズ・クロス駅、九と四分の三番線を探して;不思議な町、中世の町、エジンバラは芋がうまい;さようなら、エジンバラ―しかし、アクシデントがいっぱい);第3章 魔法の箒でロンドンへふたたび(ハリー・ポッターの部屋へようこそ;刺激的な街、はじめてのソーホー;いちばん最後の贈り物)

■要旨 「魔法の国」は、それを信じる人の心の中にある。9月1日午前11時。ハリー・ポッターに出会うため、キングズ・クロス駅発の特急列車に筆者は飛び乗った

 

魔法使いのハリー・ポッターをさがして/はじめに

二〇〇一年九月一日、午前十一時。
私は、ロンドンのキングズ・クロス駅から、スコットランドのエジンバラを経由してグラスゴーに向かう、特急列車に乗った。
行く先は、人間の世界では一そう、私たち人間の住んでいるふつうの世界では─―エジンバラのウェイバリー駅。

エジンバラ市街の中心に位置する、観光に便利な主要停車駅だ。
そして英国のファンタジー、ハリー・ポッターの物語の中では、この日、この時間、この駅から出発する列車は、ホグワーツ特急と呼ばれている。
それは、魔法界行きのふしぎな特急列車だ。

年に一度だけ、九月一日の午前十一時に、キングズ・クロス駅を出発する。
出発ホームは、九と四分の三番線。
ふつうの人間には乗車できない、魔女や魔法使いたちのためだけの特急列車だ。

じつは、イギリスのロンドンに、キングズ・クロスという駅は実在する。
そして、魔法界ホグワーツの舞台になったとも噂されているスコットランドのエジンバラ方面行きの、午前十一時出発の特急列車も実在する。
では─―九と四分の三番線は?

もちろんそんな場所、あるわけがない。
物語の中で作者のJ・K・ローリング女史が創造した場所なのだ。
何ばかなことを言ってるんだ─―たいていの人たちがそう考え、それで話は終わってしまうだろう。

実在と架空の場所が入り乱れ、物語のリアリティを盛り上げるハリー・ポッターの物語。
何が架空で、何が実在なのか、イギリスから遠く離れた日本に住んでいる私たちに判断するのは難しい。
そこで、ちょっと賛沢な旅を計画してみた。

実在の時間に、実在の場所から、実在の電車に乗ることによって、どこかでシンクロするかもしれない、まったく架空の世界を探しにいく旅だ。
簡単にいえば、英国ファンタジーの世界に出会う旅。
もつといえば、うっかり私に見つかってしまうかもしれない、魔法使いのハリー・ポッターを探しにいく旅。

そして、心の底から感動できる何かに、ささやかでもいいから、めぐり会う旅だ。
美しい音楽を聴いて、涙を流したのは、いったいいつのことだったろう。
赤々と燃え落ちる夕焼けに、瞳奪われて、いつまでも立ち尽くしていたのは。

優しい気持ちで、誰かをいたわり、誰かにいたわられて感激し、何もいらない、そのひとが幸せであるだけでうれしいと、無垢で切実な想いを抱きしめたのは。
そういう自分は、まだ心に住んでいるだろうか。
おなじ自分でありながら、年を重ねるうちに、少しずつ心が頑なになってしまったような気がする。

私の心にも、もしかしたら、魔法の世界を絶対に信じないダーズリー一家が住んでいるかもしれないのだ。
それは、とても残念なことだ。
結果から申し上げると、旅の最後に、私は信じられないような出会いを経験した。

言葉は大げさだが、感動することなどすっかり忘れていた私の心の殻が、ほうせんかの実のようにポンとはじけたのだ。
そんなバカなことあるわけない、と心の中のダーズリー一家が私を糾弾する。
でも─―奇跡はたしかに存在し、その奇跡と出会い、存在しないはずのハリー・ポッターから、私はたしかなメッセージを受け取った。

それは、はっきりと目に見える形での奇跡だった。
私が何に出会ったかは─―できれば、この本を読んでいただいて、私の驚きと喜びをぜひとも一緒に分かち合っていただきたい。
偶然という名の魔法は、きっとこんな風に、いつも人生に存在する。

目に見えないものを信じようとする時、きっと誰かが、私に魔法をかける。
私を酔わせ、私を感激させ、叫びだしたいほどの歓喜で私の心を揺さぶる。素直に笑い、素直に泣き、あふれるような優しい気持ちで私をいっぱいに満たしてくれる。
魔法使いは、きっと誰の心にも住んでいるのだ。

それは、もしかしたら、人を愛するという気持ちそのものなのかもしれない。
または夢を見つづけることかもしれない。

そんなせつない思いが、誰の心をも、きっと魔法使いにさせる。
ハリー・ポッターを探して、私は英国をロンドン、エジンバラと旅した。

 
 その他既刊
ハリー・ポッターと賢者の石 J.K.ローリング
 

 

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