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ダーク・ムーン
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著者
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馳星周 | |||||
出版社
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講談社 | |||||
定価
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本体価格 1900円+税 | |||||
第一刷発行
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2001/11/10 | |||||
ISBN4−08−774558−9 |
1 呉達龍は煙草をくわえた。 チャイナタウン─―ほとんどの建物が派手に飾りたてている。 明日は大晦日。 目の前のチャイナタウンと郊外のリッチモンドで大勢の移民が新しい年を祝うだろう。 ヴァンクーヴァー市警と騎馬警察、それにCLEU(Coordinated Law Enforcement Unit ─― ブリティッシュ・コロンビア州連合捜査局)は春節を目前に控えて合同で特別警戒態勢を敷いていた。 呉達龍はヒー夕ーの温度をあげた。外は雨。 香港を思い、身体を震わせる。 野暮用─―ケヴィンはいった。 旦那たちは香港に戻り、向こうで金を稼ぎ、向こうに女を作る。 ルームミラー─―浅黒い肌。 横に広がった鼻。 呉達龍は目を細めた。 ヒモ、ポン引き、こそ泥、タレコミ屋。 「龍寄、待たせたかい?」 哥という広東語は兄貴分を意味する言葉だった。 呉達龍は今度は広東語でいった。 ルームミラーの中の趙偉を睨んだ。 「春節だろうがなんだろうが関係ない」 ルームミラー趙偉の目が左右に泳いだ。 「あんたは香港人らしくないってことさ」 「そんなことは知ってる。おれがいいたいのは……」 「あんたもわかってるだろう?」 不貞腐れた顔。 趙偉は咳込むように話しはじめた。 話が漠然としすぎていてぴんと来ない。 |
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