ビートたけしの黙示録
 
  「語れ」と、天の声がオイラに下っちまった 崖っぷちの世の中、どう生き、死ぬのか。知と痴の巨人が捨て身の緊急提言だ!・・読んで勇気が出るか絶望するか、オイラ一切責任取れません!  
著者
ビートたけし
出版社
徳間書店
定価
本体価格 1400円+税
第一刷発行
2001/11/30
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ISBN4−19−861443−1

〈告〉

ベネチアで賞をもらったりして、オイラも映画のほうではちょっとした国際人になったらしい。
世界のたけしだって。
この間も、オイラの日本での仕事を紹介したいと、オーストラリアのテレビ局が、オイラが出ている番組を撮りに来た。

オイラがかぶり物かぶって、変なメイクでいつものようにやってたら、驚いちゃって、「おまえ、本当にたけしか?」だって。
当たり前だっつーの。
かぶり物かぶったって、ギャグ飛ばしてたって、映画撮ったって、オイラはオイラだって。

悪いか、コノヤロー。
夕暮れの新橋駅前。
SL広場は凄い。

ネクタイオヤジの大集合だもの。
ガキの渋谷・原宿、バアサンの巣鴨、オヤジの新橋って感じだね、これは。
皆、携帯を耳に押し当てて、「もしもし、もしもし」とやっている。

待ち合わせ相手と話している。
凄いエネルギーだって。
オヤジホルモンがムンムン。

相手が一メートル先にいてもわからないほどの雑踏なんだ。
目の前にいるヤツに向かって、「もしもし、今どこ?」なんてやってるんだから。
夜一〇時ともなると、酔っ払いオヤジの群れだ。

ネクタイ曲げちゃって、千鳥足で、会社の若いネエちゃんの肩なんか抱いちゃって、上機嫌で、「よお一」とかやってる。
そのオヤジ目当てに、テレビ局のヤツらが網を張っている。
アメリ力のアフガン報復攻撃について、どう思いますか?

なんてネエちゃんレポーターが、酒臭いオヤジにマイク突き出したりしてる。
そんなこと、酔っ払いオヤジに聞くなって。
オイラに聞けっつ一の。

オヤジ、いい加減なこと喋って、しまいには、「ねえ、一緒に呑みに行かなあい」
オヤジのくせして、ナンパするんじゃねえって。
いいのか、そんなに上機嫌で、レポーターネエちゃんからかったり、呑み歩いたりしてて。

二一世紀は楽じゃないぞ。
世界がぐちゃぐちゃになる可能性がある。
家庭だって、オヤジが思ってるほど安泰じゃないだろう。

カミさん、外で若い男とやっちゃってるかもしれない。
「妻であり母である前に、女でありたい」とほざいてるかもしれない。
娘は娘で、援交の常連だったりして。

その道ではかなり有名で、他のネクタイオヤジのセックスアイドルだったりして。
万引き、力ツアゲ当たり前、セックスなんて日常茶飯事、ガキもカミさんも、そんな場所と時間の中で生きている。
いいのかねえ。

脳天気に、「いや、うちは大丈夫だから」なんて言ってて。
腹が立つことばっかりだ。

皆、バカヤローだ。
”赤信号、みんなで渡れば怖くない”

 

 

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