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夜光虫
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著者
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馳星周 | |||||
出版社
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角川文庫 / 角川書店 | |||||
定価
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本体価格 857円+税 | |||||
第一刷発行
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2001/10/25 | |||||
ISBN4−04−344203−3 |
一八勝三二敗三セーブ。 オールスター出場。 勝敗や防御率の数字はもう少し変化するはずだった─立花から呼び出されなければ。 おれを欲しいというチームはなかった。 億の年俸を稼いでいるやつに土下座した。 うまくいくはずがなかった。 倒産が決まったその日、女房が家を出ていった。 そのうち年が明け、野球雑誌のライターが台湾人を連れてやってきた。 ぼやけていた顔が形を持ちはじめた。 かつての球威は戻らなかった。 土挨と檳榔の匂い。 整備もろくにされていない球場。 鬱屈がたまった。 酒とセックス。 このまま台湾で野球を続けても将来は暗い。 麗しの島─やって来る前に思い描いていた夢は砕けた。 真っ赤な唾を道端に吐き捨てる。
ドミニカ人の打った球がライト前に転がった。 八回裏で、スコアは二対一。 いわれるまでもなかった。 淀みのない日本語─アクセントが少しおかしい。 おれは王東谷の肩を叩いた。 林の手招きに応じておれはマウンドに向かった。 なにかを叫んだ。 だが、わからない振りをした。 こんなことでいちいち頭に来ているわけにはいかない。
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