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PLATONIC SEX
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著者
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飯島愛 | |||||
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出版社
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小学館文庫/小学館 | |||||
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定価
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本体価格 476円+税 | |||||
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第一刷発行
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2001/09/01 | |||||
| ISBN4−09−402396−8 | ||||||
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願いが叶うと、すべてが終わる
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プロローグ 私は、寂しいときや悲しいとき、その想いを紙に吐き出す。 誰にも見せられない、届かぬ想いをただ綴った。 その時々の感情の破片を。 |
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1999.11.16 帰ってしまうあなたに「帰らないで」とすがった。 「帰っちゃうの……」 さっきまであなたが着ていた白いバスローブの残り香に顔をうずめ、袖をとおしてベッドに入った。 ─―私は失恋した。 その想いは伝えられず執着してゆく。 そこには哀しみだけでなく違う感情が私を襲っていった。 独り寂しい夜には、それを引っ張り出し袖をと打して、ベッドヘと潜りこんだ。 彼の匂いは私の身体を熱くさせ、感情を昂揚らせた。 彼ではなく、彼の"匂い"に敏感に反応してしまう自分。 いつもそうだ……。 私は愛情と共にある嫉妬や憎しみを殺してプライドを保ってきた。 これまで書き散らかしてきたさまざまな想いを、ひとつひとつ拾い集めて紡いでみよう─―。
T 「セックスが、そんなに楽しいか」 父が右手でテーブルを叩きつけ、大声で怒鳴った。 * 父は、小柄な人だった。 小学校低学年のときの通知表を見ると、"内向的"と書かれている。 先生が耳を私の口に持っていっても、私の消え入りそうな声は聞き取れなかった。 といわれ続け、できないと怒鳴られ続けた私は、親がいない 私は、いつも人の目に怯えていた。 もちろん、食事中にテレビを見せてもらったことなんかない。 傍目から見れば、よくできた家族。 「今日、学校どうだった」 「別に……」 私は食事中に楽しく笑った記憶が少ない。 母からすれば子どもたちが叱られるということは、遠回しに「お前の教育がなっていない」といわれているようなものだった。 着付けの資格を持っていた母は、家ではよく着物を着ていた。 母が私に求めていたのは、デキがよくて礼儀正しい"理想の子ども"だった。 習い事に追われていたとしかいえない日々だった。 日本舞踊も習わされそうになったけど、それは私の必死の抵抗でようやく取りやめになった。 夕食が済むと母から「あなたのためだから」と、勉強するように仕向けられる。 父が仕事で遅いときはまだいい。 その三十分から一時間の間、決まって父は、私の机の後ろで物差しを持って立っている。 「集中が足りない」父は何かにつけては物差しを振り上げた。 普通、子どもは、親とコミュニケーションを取りたがるものだ。 その頃、どうしても友達と観に行きたい映画があった。 友達とだけで街に遊びに行くなんてもっての他だった。 その衝動を抑えきれずに、内緒で観に行ってしまった。
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