![]() |
||||||
オカルト
|
||||||
著者
|
田口ランディ | |||||
出版社
|
メディアファクトリー | |||||
定価
|
本体価格 1100円+税 | |||||
第一刷発行
|
2001/10/03 | |||||
ISBN4−8401−0370−4 |
異界の扉 幽霊というものには、会ったことがない。 そういう人はきっと、常人には見えない波長を感知する才能があるんだろう。 じゃんけんすらいつも負ける。 ちくしょう、である。 なんでえ、私にもなにか人に優る「力」がないもんかいな。 を知るという能力だった。 こんなことは誰でもできるのかもしれない。 これはもう「気配」としか言いようがたいのだが……。 たとえば、私は「雨の気配」とか「雪の気配」とかを感じる。 この「気配」というのは「予知」というのとは違う。 たぶん私は「眼」よりも「皮膚」の方が性能がいいのだ。「眼」で感知することは苦手だけど、「皮膚」で感知することなら得意なんだ。 三十五歳のときに、兄が突然に死んだ。 あたり一帯は凄まじい死臭で満たされた。 兄の死臭を嗅いでから、私はどうしたわけか小さなものが気になって仕方ない。 部屋の隅の蜘蛛の巣、そこにひっかかったショウジョウバエ。 自分の目がマイクロレンズになったみたいだった。 否応もなく。
|
|||
|
このページの画像、本文からの引用は出版社、または、著者のご了解を得ています。 Copyright (C) 2001 books ruhe. All rights reserved. 無断でコピー、転写、リンク等、一切をお断りします。 |