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蝶の舌
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著者
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マヌエル・リバス | |||||
出版社
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角川書店 | |||||
定価
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本体価格 1000円+税 | |||||
第一刷発行
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2001/07/10 | |||||
ISBN4−04−897018−6 |
「やあ、スズメくん。ついに今年は蝶の舌が見られそうだよ」 肉眼では見えない小さな物がその道具で大きくなるという話を、先生から何度も聞かされていたので、子供たちは本当に大きくなるところをすでに見たような気がしていた。 夢中になって説明する先生の言葉そのものがまるで強力なレンズになったかのようだった。 指を濡らして砂糖壷に突づ込んでみると、指先が舌の先になったみたいに、口の中が甘くなるだろう?蝶の舌も同じさ」蝶がうらやましいと誰もが思った。 よそ行きの服を着て世界を飛び回り、シロップがたっぷりの樽が置かれた居酒屋に立ち寄るように花から花へと留まっていく。 つまり僕がどうして先生を好きなのかが理解できなかったのだ。 その言葉は、小枝の鞭のように空中で捻った。 二、三日たって姿を現したが、「狼の谷」からでも逃げてきたみたいにぶるぶる震え、一言も口がきけなかったという。 同じ年頃の子供たちはもう働いていた。 だからちっぽけな仕事場でいたずらをされるより、離れたところにいてくれるほうがいいと考えた。 僕にあだ名を付けたのは、ゴミや落葉の清掃係のコルデイロだった。 「お前はスズメみたいだな」学校へ入学する前の年の夏ほど走り回ったことはない。 いつもシナイ山の頂を見つめながら、いっか僕に翼がはえ、ブエノスアイレスへ飛んで行くことを空想した。 |
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