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非戦
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著者
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坂本龍一 | |||||
出版社
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幻冬舎 | |||||
定価
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本体価格 1500円+税 | |||||
第一刷発行
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2002/1/10 | |||||
ISBN4−344−00144−3 |
たった一人の反対者 バーバラ・リー 議長─ 私は今日、ニューヨーク(WTC)とヴァージニア(ペンタゴン)とペンシルベニア(墜落)で命を落とし傷ついた人びとや、その親類縁者のみなさんに思いを寄せながら、悲しみに胸が潰れるような気持ちで演壇に立っています。 アメリカ国民のみならず、全世界の何百万という人びとの上にのしかかるこの深い悲しみを理解できない者がいるとすれば、それはよほど愚かか、あるいは無神経な人たちでしょう。 九月十一日は世界を変えました。 それでも、軍事行動が合衆国に対するさらなる国際テロリズムを防止できるとは、私にはけっして思えません。 しかし、反対投票がいかに難しくとも、私たちのだれかが自制を唱えなければなりません。 これから行なうのは従来の戦争とはちがいます。いままでのような対処のしかたは通用しないのです。 今回の危機には、国家安全保障、外交政策、社会の安全対策、諜報活動、経済、そして殺人といった多くの問題ががかわっています。 私たちは結論に飛びつくべきではありません。 わが国は裏に服しています。もしも反撃を急いだら、私たちは女性や子どもをはじめ、数多くの非戦闘員を戦渦に巻き込む危険を冒すことになるでしょう。 最後に、私たちは終結への戦略や限定的な目標ももたずに泥沼の戦争をはじめないよう注意すべきです。 一九六四年、連邦議会はリンドン・ジョンソン大統領に対し、敵を撃退してさらなる侵略を食い止めるため、「必要なあらゆる手段をとる」権限を与えました。それによって本議会は憲法上の責務を放棄し、長年にわたるベトナムでの宣戦布告なき戦争へと国の進路を誤らせたのです。 そのとき、トンキン湾決議に反対したわずか二人の議員の一人であるウェイン・モース上院議員は次のように言明しました。 モース上院議員は正しかった。 私はこの結果が心配です。 けれども今日、ワシントン大聖堂における痛ましくも美しい追悼ミサの中で、気持ちが固まりました。 「行動に際しては、それを受けて自分が嘆くような悪をなすことはやめようではありませんんか」と─―。 【二〇〇一年九月十四日アメリカ下院議会における演説】 (翻訳/星川淳)
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