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日本の論点2002
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著者
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出版社
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文藝春秋 | |||||
定価
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本体価格2667 円+税 | |||||
第一刷発行
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2001/11/10 | |||||
ISBN4−16−503010−4 |
21世紀の日本の戦略とは いまこそ新しい現実主義に目覚め、国家の座標を見直すべきとき 中西輝政 なかにし・てるまさ
すでに二一世紀が始まっているのに、この国の座標軸は狂ったまま、とめどない漂流の様相をますます深めています。 経済の低迷は一段と加速され、「失われた一〇年」が、このままでは「失われた二〇年」になりかねない情勢です。 加えて、「教育の崩壊」現象も一段と進み、社会規範の深刻な崩壊と軌を一にして、奇妙な事件や不祥事があとを断ちません。 私はすでに早くから、これは日本という国の衰退の危うさを宿した流れであり、根本的な「国の基軸の立て直し」という視点からの取り組みが必要なところに来ているのだ、とくり返し論じてきました(たとえば『なぜ国家は衰亡するのか』PHP新書、『国まさに滅びんとす』集英社刊、『日本の「敵」 』文藝春秋刊、など参照)。 それは、この国の内政・外交の全般を含めた歴史的な「座標軸の転換」をめざす変革でなくてはなりません。 私は、それには二つの軸が必要で、一つは経済や社会については効率と市場原則により忠実な構造への改革であり、もう一つは政治・外交、安全保障・教育などにおいて「国家としての基盤と価値観の確立」をめざすものでなければならないと思うのです。 それは端的に言って、戦後を乗り越えることをめざす「保守革命」と呼ぶべきものです。 二一世紀の日本が一日も早く「戦後」を乗り越えなけれぱならないのは、一つには、このままゆけば日本の衰退はいよいよ取り返しのつかないところにまで進む状況になってしまうからですが、もう二つは、米同時テロに見られるように「戦後日本」の存立を可能にしてきた世界の情勢が、二一世紀に入っていよいよ本格的に転換し、もはや後戻りしない趨勢がはっきりしてきたからです。
幻想にすぎなかった「国違の時代」 およそ一〇年前、冷戦が終って東西ドイツが統一したりソ連が崩壊して「平和な時代」の到来が唱えられ、"世界新秩序"が喧伝される時代がありました。 しかし、いま一〇年余り経って今後の世界をもう一度、新しい眼で→から見直すときが来ています。 実際、今回の不況は七〇年代の石油危機のとき以来の「世界経済の危機」の様相を示していますが、もしそれが現状より深刻化すれば、テロ問題にとどまらず必ず世界の政治・安全保障の基本秩序にも甚大な影響を及ぼすことになるでしょう。 湾岸戦争から一〇年経って、すでにはっきりしたことは、中東和平は結局、「絵に描いた餅」になってしまったし、国連が世界秩序の中心として地域紛争を防止・解決するという、「国連の時代」イメージは、単なる幻想にすぎなかったということであろう。 イスラエルのラビン首相とパレスチナのアラファト議長が、中東和平の実現者としてノーベル平和賞に輝いたのは、つい昨日のことであった。
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