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小説作法
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著者
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スティーブン・キング | |||||
出版社
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アーティスト・ハウス | |||||
定価
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本体価格 1600円+税 | |||||
第一刷発行
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2001/10/31 | |||||
ISBN4−901142−67−4 |
前書き その一 一九九〇年代のはじめ、私はメンバーのほぼ全員が物書きを本業とするロックバンドに参加した。 ロック・ボトム・リメインダーズの生みの親は、サンフランシスコのさる出版社で広報を担当し、自身、楽器をよくするキャシ・カーメン・ゴールドマークで、編成は、リードギターのデイヴ・バリー、べ一スのリドリー・ピアスン、キーボードのバーバラ・キングソルヴァー、マンドリンのロバート・フルガム。 私はリズムギターを受け持った。 もともとは一回こっきりの企てで、ABC、アメリ力小売り書店協会年次大会の余興にニステージ演奏し、物笑いの種になって失われた青春の数時間を取り戻せば、あとは解散の予定だった。 金を取って人前で演奏できる腕前である。 私たちはどさ回りをして、そのことを本に書いた。私の妻は写真を撮り、気が向けば踊ったが、これがまた、ほとんど毎度のことだった。 メンバーには出入りがあって、キーボードはバーバラからコラムニストのミッチ・アルボムに変り、アルはキャシと馬が合わずにグループを去ったが、おもだった顔触れは、キャシ、エイミ、リドリー、デイヴ、ミッチ・アルボム、私、それに、ドラムスのジョッシュ・ケリー、サックスのエラズモ・パオロ、と以前のままである。 私たちが演奏を楽しんでいることはもちろんだが、それに劣らず、気の置けない仲間意識がグループを支えている。 何かにつけて読者から、止めないように言われている本業について話し合う機会があるのは有り難い。 答えようもないことはわかりきっているからだ。 「言葉について、誰も訊こうとしないわね」私はエイミのこの一言に測り知れないほど多くを負っている。 小説作法の本を構想するにいたった理由は何か?書くに価するものがある、と自分から思うようになったのは何故だろうか?単純な答は、私のように小説をたくさん書いている作家はこの仕事について、多少は語るに足る素材があるだろうということだ。 私がおこがましくも小説作法を人に語るなら、世俗的な成功だけではない、もっときちんとした動機がなくてはならない。 だが、エイミは正しかった。 ドン・デリロ、ジョン・アップダイク、ウィリアム・スタイロンの文学となると人は何やかや盛んに質問するが、大衆作家にその種の質問を向けることはない。
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