美女入門 PART 3
 
  女の願望は果てしなく・・・。もっとモテたい、もっと痩せたい、もっとキレイになりたい!さらにパワーアップした、マリコ流美女生活。多くの支持を受けて、大好評第三弾。2001年、人々はこう呼んだ。すべてを手に入れた女と。  
著者
林真理子
出版社
マガジンハウス
定価
本体価格 1000円+税
第一刷発行
2001/9/20
ご注文
ISBN4−8387−1320−7

一緒にお食事しませんか?

最近あるアイドルと仕事で会った。
名前を言えないのが残念なぐらいの、超大物と思っていただきたい。
さっそく根掘り葉掘り聞く私。

最初はかなり警戒されていたが、食事が始まる頃にはやがて彼の口もほぐれていく。年頃の男のコだから、やっぱり恋人が欲しいそうだ。
けれども同じ芸能界の人は、なんかめんどくさくてイヤ。
あちらもマネージャーがしっかりガードしているので、近づく隙がないという。

「だけど僕なんかが、普通の女のコと知り合うチャンスなんかまずないんですよね……」ちょっと淋しそうだった。
日本中の女のコが渇仰するハンサムでカッコいい男のコ。
そのコが、どうやって女のコと知り合ったらいいのだろうかと悩んでいるなんて……。

私は感慨にうたれた。
うちの親せきでOLをしているのと、女子大生をしているのがいる。
が、どっちも年上だし、彼がひと目惚れしてくれるほどのルックスでもないしなあ……。

ああ、惜しい。
なんだかわからないけどすごくもったいないと思う。
私はその夜、この話をいろんな女友だちとしんみり話し合った。

「よくさ、スターと結婚したり、恋愛したりする普通の女のコってさ、偶然、”打ち上げパーティ”に来て、っていうことになってるけど、打ち上げに来ること自体、もう普通の女のコじゃないのよねえ」
「そうよ、そうよ。テレビ局やコンサートの関係者とコネがなきゃ駄目なのよ」
「結局、芸能人が接触出来る"普通の人"は、スチュワーデスかアナウンサーということになって、みんなああいう人にとられるじゃん」

普通の女のコなら、誰でもこの種のシンデレラ願望を持つ。
どこといって取り柄もない普通の女のコ。
が、彼女の強味はこの普通さ。

彼女がふとしたことから、今をときめくアイドルと出会う。
美人にさんざん飽きてる彼の方は、この普通さが気に入って彼女のことを好きになる。
そお、少女マンガによく出てくるパターンですね。

が、私は断言してもいいけど、この"ふとした"ことなんか起こるはずはない。
アイドルは電車にも乗らず、道も歩いていない。
飲むところだって限られているから、まあ、普通の女のコが隣に座って気軽に話しかけるなんてことは出来ないだろう。

普通の女のコが、スターと出会うことは全くない。
全くないと言いきってしまうと淋しいので、私がちょっと裏技をお教えしよう。
それはお稽古ごとの世界ですね。

私が習っている日本舞踊の世界では、普通の女のコが、歌舞伎俳優の御曹子と仲よくなるということが結構ある。
お稽古場で会ったり、発表会を手伝ったり、何となく、という感じですかね。
この他、ワインスクールヘ行き、某俳優さんとつき合うようになった友人がいる。

あとは最近、キムタク静香カップルで注目を浴びた、スキューバダイビングや釣りの世界もいいみたい。
こういうところで芸能人は普通の人扱いされるのを好むからだ。
が、近づく方も当然テクニックがいって、絶対にミーハー気分を出さないこと。

こういうのを有名人は非常に嫌う。
が、まあ確率は宝クジ並みだといっておこうかしらん。
そんなことよりも、どうやったら恋人を見つけられるか、ということの方が普通の女のコにとってはずっと重要であろう。

私のところへは、よくいろんな方から手紙が届けられる。
中で目につくのは、「恋人がいない。どうやったら見つけられるのかわからない」というやつですね。
「アンアン」でもよく特集される永遠のテーマである。

私たどまあ水準以上の女のコが、学校や職場に放り出されたら、すぐに恋人が出来るのがあたり前だと思うけれども、世の中はそんなに単純にいかないらしい。「職場に全然いい男がいない」
と手紙は続く。それならば合コンというテがあるんじゃないかと思うのだが、「合コンに来るのに、ろくな男がいない」とくるわけだ。

こういう女のコに限って、もの凄くロマンティストだったりする。
新幹線で隣り合わせる。
あるいは何かトラブルがあった時に、突然現れて助けてくれる。

海辺でふと目が合う。
あるいは本屋で偶然同じ本に手を伸ばす……エトセトラ。
マガジソバウスに、テツオとハンサム度を競ったA氏がいた。

未だに結婚出来ないテツオに比べ、彼はもうとうにパパになっている。
そのA氏が独身の頃の話だ。
成田からの帰り、後ろから来たタクシーに追突された。

そのタクシーにはスチュワーデスが三人で乗っていて、一応名刺交換をしたそうだ。
そうしたら一週間もしないうちに、「一緒にお食事しませんか」という電話がかかってきたそうである。
恵まれていると思われてる彼女たちだって、頑張っている。

いい男を見つけたら、チャンスを逃すまいとする。
いい男がいない、とぐずぐずしてたらもったいないじゃないか。
私はつい先日、年下の男のコとごはんを食べた。

久しぶりに会ったのだが、いい男にたっていてびっくりし、さっそく私のリストに加えたのである。
いったんは手放しても、時々はチェックを入れる。
男の人はどう変わるかわからん。
そして選択の幅を拡げていくのが賢い女のやり方である。

 

 

 

・・・・続きは書店で・・・・