はじめに
この前、大橋巨泉さんと対談をした。彼の『人生の選択』という本が、ベストセラーになったね。もう一生懸命に仕事をする時代は終わったと。楽しみが主で仕事が従だというスタンスで、セミリタイや生活を楽しんでいる。これがウケて、大ベストセラーになった。でも、会ってみたら、彼は非常に忙しい。日本、オーストラリア、カナダ……と行き来して、店をやったり、文章を書いたり、釣り、ゴルフ……。
現役のときよりはるかに忙しいんだって。実はやっていることは現役のときと同じなわけ。では、どこが違うのか。テレビの仕事をしていたときは、釣りもゴルフも何時間と終わりが決まっていたと。だから、思いつきりできなかった。いまは、何でも思いつきりできる、と。さらに、彼は好きなことをして、それが全部仕事になっている。そこが違う。
かつては仕事をして、その代わりに自分の好きなことをいっぱいやる。いまは違う。好きなことをガンガンやって、それが仕事になる。すごく幸せな生き方だと思う。僕はまさにそこだと思う。自分がお金を払って好きなことをやるのを趣味という。自分が好きなことをやって、出すのではなく、それで金が入ってくること、これをプロという。
これが僕の言う仕事人間。好きなことをして、それで生きていける。それが人生でいちばん幸せだと思っている。そのためには、何よりも自分の好きなことを、好きで人より勝っていることをどう見つけるか、ということが大事なんです。
長嶋茂雄さんがすごいのは、自分が好きなことで人よりうまいのは野球だと、見極めたところですよ。面白い人間というのは、だいたい好きな仕事を探して、その仕事をめちゃくちゃにやっている人間。そして、それが楽しくてしょうがない、という人たちですよ。
ノーベル賞をとった白川英樹さんや金メダルをとった高橋尚子さん、石原慎太郎さん、ビートたけしさん、村上龍さん……みんな自分が興味があること、好きでしょうがないことを追いかけているうちに賞をとったり、ベストセラーを生み出したりしたわけでしょう?
義務感とか強制とか苦労とか、いっさいそういうものが感じられないよね。好きなことは飽きないし、いくらやってもストレスにはならない。いくらでもできれば、やっぱり人よりうまくなりますよ。だから、見つけてほしい。自分は何が好きなのか、を。
そして、それをとことん追いかけていくこと。それが本当に「自分」を生きることであり、人生を切り拓いていくのだから
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いまの世の中、いい話は何もない…。でも戦後の高度成長はマイナスからのスタートだった。自分の不運を不況のせいにするな。上昇を目指す頭への180度切り換え方!
考えるだけなら誰でもできる。実現させろ
この間、マクドナルドの社長の藤田田さんに会ったら、苦戦が伝えられる外食産業の中でマクドナルドの業績だけがいいという。ある駅前では、ファストフードの店が3軒しのぎを削っていた。
そのうち、マクドナルドだけが伸びて、他の店はできては潰れ、をしょっちゅう繰り返している、と。僕はとても興味を持って、「マクドナルド躍進の秘密はいったいどこにあるんですか」と聞いてみた。すると、藤田さんはこう言りたんだ。
「勝負は速さと安さだ」と。実を言えばこれは誰でも考えることだ。ファストフードの”売り”はまさに「速さと安さ」なのだから。問題は、その考えを”どう実現するか”。マクドナルドは実際、他社に比べて6割くらい安い。それによく利用する娘たちに聞いてみると確かに速いという。その「速さと安さ」の理由を聞くことは、躍進する企業の力の素を知ることにもなる。そこから、この時代に生き残る発想というものが見えてくるように思う。
まず、なぜ速いのか。ほとんどの外食産業は、オーダーをうけて調理し、それを提供する流れの効率化を考える。つまり、ソフトで対応しているわけだ。それが一般的でしょう。ところが藤田さんは、それには限界がある、と。ハードの面からの改良の必要があるんだ、と。
だから、調理機械そのものの開発に取り組み、速く加工調理できる方法を必死に考えて改良を続けている。いかに速いスピードで肉を切るか、どうやって速く詰め物をするか、そういうことをやたらと研究している。だから客を待たせない。これが速さなんだね。
そして価格。これは原材料費に大きく左右されるから仕入れが重要になる。藤田さんは世界中の肉の市場─シカゴ、メキシコ、ヨーロッパ……いまはどこが一番安いか、ということを常に睨んでいる。コンピュータの画面でさまざまな市場を24時間監視し、そのとき一番安い肉を買っているんだ。
しかも、藤田さんが言うには、ただ安いだけじゃダメだと。どういうことかというと、自ら40年間研究しているという為替の相場を加味していると言うんだね。買い付ける相手国の通貨に対して円安か円高か。これも重要なポイントだ。円安であれば、価格が安くても本当に安いことにはならないからね。だから円高のときに一番安いところで買う。
そういうことをコンピュータを駆使してやっていると言っていました。市場価格と為替を考慮しながら仕入れる。売れるから大量に仕入れられるし、回転が速いから、どんどん売れ、さらに大量仕入れが可能になる。まさに、いい循環ができあがっている。
言われてみれば、どれも納得できる話だ。悪く言えば、誰でも考えられるような当たり前のことだ。でも、”考え”を”実践”できる人というのは、実は意外と少ない。考えているだけでは何も始まらないよね。
行動を起こしてはじめて、成功への道もひらけるんだから。考えているだけの人か、実践した人か。たったそれだけのことです。マクドナルド躍進の秘密はここにあるんだと僕は思う。つまり、根底にあるのは、人とは違った”異能”の才なんですよ。
藤田さんは、東大の法学部を卒業した後、会社に就職しなかったし、官僚にもならなかった。それで何をしたかというと、自分で商売を始めたんだね。
マクドナルド以前に自ら商売をやってきたから頭デッカチじゃない。頭ではなくて、身体で、実践を覚えている。例えば、ネクタイの例がある。自分のだんなさんのネクタイを見にきた奥さんに一番いい言葉がある、と言う。
どんな言葉だろうと思ったら、「それが一番品がいいです」その一言だと。これで、たいていの奥さんは買うんだって。そういう実際に現場で覚えたノウハウをやたらに知っている。観念的ではなく、現場の対応をどうずればいいのか、ということを非常によくわかっている。
経営者というのは現場を知らない人が多いけど、藤田さんは社員の中でも一番現場を知っていると言ってもいいような経営者なんだ。これは、現場で働く社員にとっても、怖いよね。へ理屈でごまかしたりはできないんだから。そういう意味でも僕は、藤田さんという人は異能の人なんだと思う。
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