西荻窪キネマ銀光座
著者
角田光代/著 三好銀/著
出版社
実業之日本社
定価
本体価格 1300円+税
第一刷発行
2003/06
ISBN 4-408-61230-8
 
今注目の女性作家と、カルト的人気の漫画家による、和洋の名作映画をテーマにした、コラム&コミックのコラボレーション。
 

繁華街からほんの少し離れた、なんの変哲もないちいさな町、あくまでたとえばの話、東京の西荻窪あたりに、古い映画館がある―。心の中で、ときおりそっと思い返すような大切な映画たちを、角田光代のエッセイと三好銀のオリジナルコミックでご紹介します。

[目次]
ローマの休日;キャリー;ポンヌフの恋人;バーディ;キッズ・リターン;ダンサー・イン・ザ・ダーク;バベットの晩餐会;バッファロー’66;明日に向って撃て!;オール・アバウト・マイ・マザー;ションベン・ライダー;ドランク・モンキー酔拳;太陽がいっぱい;エレキの若大将;アメリカン・ビューティー;風の谷のナウシカ;ブルーベルベット;エンジェル・アット・マイ・テーブル;仁義なき戦い・広島死闘編;17歳のカルテ;三月のライオン;ロング・グッドバイ


繁華街からほんの少し離れた、なんの変哲もないちいさな町、あくまでたとえばの話、東京の西荻窪あたりに、古い映画館がある。
今にもとりこわされそうなぼろっちさなんだけれど、でも、古びたその建物には、どことなく気品がある。
私はときどき仕事をずるやすみして、その映画館に足を運ぶ。
午前中の陽射しのなか、商店街で食料を買いこむ。コロッケとか、おにぎりとか、ときにはケーキなんかも。
まるで逃亡するみたい、と、あれこれお気に入リを買いこみながら私は思う。
この映画館、だれがどんなふうに選んでいるのか、三本だて映画の組み合わせがめちゃくちゃなのだ。
けれど、そんなことは私にはどうでもいい。
がらがらの映画館の、きしむ椅子に腰かけて、急速に夜が降リてくるみたいに場内が暗くなると、とたんに私はわくわくする。
おおきなスクリーンに映し出されるのがどんな物語でも、私は夢中になっている。
あるいは私を夢中にさせるのは、映画それ自体ではなくて、たった一日の逃亡、そのものなのかもしれない。
(本文P.3 より引用)


このページの画像、引用は出版社、または著者のご了解を得ています.

当サイトが引用している著作物に対する著作権は、その製(創)作者・出版社に帰属します。
無断でコピー、転写、リンク等、一切をお断りします。

Copyright (C) 2001 books ruhe. All rights reserved.