あなたは、なに座? 12の星座に秘められた 12のハートフル・ストーリー どこにもない世界の誰でもない人たちの物語 でも実は、あなた自身の物語……
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駅は混み合っていた。 自動販売機にコインを投げ入れて行き先のボタンを押すと、ことん、と音がして、販売機から、とてもいい香りのするブルーチーズがひとつ出てきた。 改札口へ行って駅員にそのチーズをすこし千切ってもらってから、僕はホームに滑りこんできた地下鉄に乗った。 山羊に会いに行くのだ。 地下鉄はそのまま土のなかに、もぞもぞと潜りこんでいく。 僕はシートにかけて、山羊のことを考えていた。 会うのは久しぶりのような気がする。 地下鉄はいくつかの駅に停車して、そこで何人かの客を乗せた。 ほかの乗客たちも僕と同じように、みんな手にブルーチーズを持っている。 みんなも山羊に会いに行くんだろうか、そう思ったけれど僕は黙っていた。 五つ目の駅が近づいた。 地下鉄はもぞもぞと地上に出ていく。 ─山羊の駅です。 車内のアナウンスがあった。 その駅で降りたのは僕一人だけだった。 よく晴れた気持のいい午後、ひっそりとした駅舎の伝言板の前で、山羊はじっと僕を待っていてくれた。 「待った?」と、僕は言った。 めえ、と山羊は答えた。そんなに待っていなかったみたいなので安心した。 僕は持っていたブルーチーズを伝言板の前の切符箱に入れて、山羊と一緒に駅舎を出た。 駅の前には野原につづく長い一本道があって、遠く山並みが霞んでいる。 「久しぶりだね」と僕は言った。 「この前会ったのは、たしかクリスマスの日だったよね。 あのときはみんな集まって、朝まで大騒ぎをしたね。あのときのジョーク、まだ覚えてるかい。 トマトが地面に落ちるときの速さについての……、 あれは傑作だったよね」
(本文P.6、7より引用)
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