孤独
著者

北野武

出版社
ロッキング・オン
定価
本体価格 1500円+税
第一刷発行
2002/07/26
ISBN4-86052-008-4
初めて語る父親、息子、娘、妻への想い 人生で一回だけ宗教を信じた瞬間とは?

10万部の画期的自叙伝『余生』の続編がついに登場!その名も、北野武『孤独』
大好評の北野武インタヴュー連載の第2弾。SIGHTに掲載された「家族」「暴力」「宗教」をテーマとしたインタヴューに、今回の単行本用に「酒」「野球」「新宿」について語った語り下ろしインタヴューも加えて、すべて一人語り形式の形で収録。父、息子、娘という極めてプライベートな事柄から、少年時代や芸能界の数々の伝説的エピソードまで、北野武の55年の人生という壮大な物語が明らかになります。北野武はなぜ孤独であり続けなければならないのか? その答えを本書で見つけてみてください。

家系

俺ねえ、親父って、意識したときには既にイヤな奴としか思わなかったんだよなあ。
働いて、おいらたちのこと食わしてるらしいけど、おふくろを叩いたりなんかするから。
だから、イヤな奴だなあと思ってたんだ。
だって、うちの親父、小学校も出てないからね。
ほんとだって。
自分の名前書けないんだから。
笑っちゃうよ?だから、うちの兄姉は、親父のこと話したがんないもん。
浮浪者やってたって噂もあるぐらいなんだから。
北野家の名前を継ぐために親父のこと袷ってきたって噂あるんだ。
再婚だからね、うち。
うんそうなの。
おふくろによると、おふくろの最初の旦那は中尉だったらしいよ。
でも、長男の兄貴が言うには、確かに軍人なんだけど、そんなに偉くなかったらしいけどね。
そいで、長男の、さらに上に“勝”って子供がいたんだけどさ、それが前の旦那の子供らしいんだ。
脳膜炎で死んでしまったんだけど、まだ位牌はうちに残っていて。
おふくろの話じゃあ、その子はすごかったって。
大天才だったみたいだよ。
運動もすごいし、勉強もすごいし。
だから、俺らは「こいつら、あのバカジジイの子供だから、しょうがねえんだ」なんて、おふくろによく言われたよね。
一番上の兄貴は俺とおんなじ父親だと思うんだけどみんなはっきり言わねえんだよ。
だって、俺、親父がおふくろの二番目の且那だって知ったの、そんなに古くないよ。
大学の頃じゃねえかなあ。
一番上の兄貴が言ったんだ。
北野家の墓に行ったら、「北野」って彫ってあるのが四つ並んでて、全部親父の兄弟の墓だって言うんだけど、その兄弟の母親がみんな違うんだよ。
それで聞いてみたら、そういうことだったんだけどさ、兄貴も、おふくろも、そんなはっきり言いたがらないんだよね。
元々、うちは弓を作る弓屋だったらしいよ。
だから、近所の人とかに「たけちゃん?ああ、弓屋の子だよ」とかってよく言われたもん。
弓って漆を使うじゃない?矢に丸描いたり、弓に絵描いたり。
そいで、戦後、バラックがワーッて建っちゃったときに、どうもペンキ屋になったみたいなんだよね。

(本文P.16、17より引用)

 
 

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